本研究では,茶の高品質な機械収穫を実現する「手摘み収穫機構」のハードウェア開発,および茶葉の成熟度を画像処理を用いて計測する「適期判断システム」のソフトウェアの開発を遂行している.以下,それぞれの研究について最終年度の成果を報告する. 手摘み収穫機構では,昨年度実施した基礎実験およびシリコン扱ぎ胴の設計要領の検討を受けて,1.シリコン扱ぎ胴の製作,2.その性能試験の実施を目標とした.1.シリコン扱ぎ胴の製作では,当初3DCADソフト「Solidworks」を用いて,親指の腹形状に相当する凸形扱ぎ胴および人差し指の関節形状に相当する凹形扱ぎ胴のシリコン型枠を上下分離の型枠で製作する方法で試作を繰り返した.しかし,設計要素の変更に伴ってそれぞれの扱ぎ胴の型枠図面を変更するのに多くの時間を要したことから,設計要素の変更の容易な型枠図面のポリゴン出力プログラムの製作を行った.プログラム言語にはpythonを用い,STLフォーマットの3Dプリンタ用ファイルを製作することに成功した.さらに,異なる形状の扱ぎ胴を融合した螺旋ねじ形状に変更した.これを用いて,直径30㎜,長さ150㎜のシリコン扱ぎ胴1対を製作し,三番茶にて性能試験を実施した.その結果,茶芽の収穫率が低かったものの,高い品質を示す正常芽の割合が多い収穫性能を確認することができた. 一方,適期判断システムは,上記手摘み収穫機構のプログラム開発が三番茶期上旬までかかったことから,ドローンを用いた茶園の空撮画像の取得とスマートフォンを用いた撮影試験に留まった.撮影試験の結果,太陽光の入射角,光量,茶葉の表面反射光などの影響で正確な成熟度の判定には至らず,改良が必要であることがわかった.
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