研究課題/領域番号 |
16K07960
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
岩崎 浩一 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 教授 (90232652)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 分解特性 / 地温 / マルチ栽培 / 甘藷でん粉粕 / 生分解性 |
研究実績の概要 |
1.生分解性マルチシートの原料の配合比により土壌中での分解特性がどのような影響を受けるかを明らかにするため,マルチシートを土壌中に埋設する実験を行った. 原料の配合としては,デンプン粕40%に対して,(1)新聞紙60%,(2)コピー用紙60%,(3)段ボール60%の3種類の組み合わせとした.平成28年度に購入したシートマシンによりそれぞれの配合のマルチシートを作成し,1.5cm×20cmの試験片を切り取って,一般のほ場の深さ5cmの位置に埋設した.8週間にわたり埋設し,2週間ごとに試験片を掘り出し,質量,厚さ,引っ張り試験による破断力を測定した.その結果,質量の保持率は,小さい順に段ボール,コピー用紙,新聞紙となっていた.厚さについても同様の順であった.破断についても同様の順であったが,値の大きさは質量や厚さの場合よりも大きな差が出ていた.以上のことから,デンプン粕と混合する原料により分解特性が異なり,新聞紙が最も分解が遅く,コピー用紙,段ボールの順であることが判明した. 2.デンプン粕(40%)と新聞紙(60%)を原料とするマルチシート(25cm×25cm)を作成し,これを貼り合わせて100cm×125cmのシートにした.ほ場にこの試作シートを敷設してコマツナを栽培し,生育や収量に与える影響を検討した.対照区として慣行のポリマルチを用いた試験区を設けた.10週間にわたり栽培を行い,雑草の生体重,地温,pF値,コマツナの草丈,コマツナの生体重を測定した. 実験の結果,試作シート区では,雑草の発生は抑制する事が出来たが,コマツナの生育,収量はポリマルチ区に比較して劣っていた.生育条件としてもっとも劣っていたと考えられるのは,地温の条件であった.これは,試作シートは色が白く,太陽光を反射してしまうこと,紙は透水性が有り,水分の蒸発時に熱を奪われたなどが考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度に,デンプン粕の配合割合が40%が最も適当である事が明らかになった.平成29年度は,平成28年度に実施する予定であった,生分解性マルチシートを作成するためのパルプ原料ごとの分解特性を明らかにする研究を行った. 試作マルチシートを使った栽培実験を行うために,夏季に予備的な実験を行ったが,豪雨に見舞われたため,再実験を行うことになった.そのため,本実験の開始時期が遅くなり,冬季の栽培となった.試作シートの夏季栽培における性能を調査することが出来なかった.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度までに出来なかった,夏季の栽培実験を実施する.また,土壌中の分解特性についても,気温の高い状態で実施する予定である. 生分解性マルチは土壌中の微生物の活動により大きな影響を受けると考えられるので,実験中の土壌微生物の状況についても計測を行い,マルチの分解との関係を明らかにする予定である. 最終的には,分解に要する期間と原料の配合割合等を明らかにし,作物に応じたマルチ原料の配合を提示出来るようにしたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
土壌のC/N比の分析のための経費などの支払いが相手機関の都合により,平成30年度になった.原材料の取得に必要な経費が,予定より少額となったことなどにより次年度使用額が生じている. 次年度経費で,平成29年度に行った土壌のC/N比の分析費用の支払いを行う.また,平成29年度に実施できなかった夏季のマルチシートの分解実験の材料費,計測用の消耗品,人権費などに使用する.さらに,土壌微生物の分析の経費ならびに研究成果を学会で発表するための旅費などに使用する.
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