研究課題/領域番号 |
16K07962
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
兼子 敬子 (大橋敬子) 玉川大学, 農学部, 教授 (50332599)
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研究分担者 |
渡邊 博之 玉川大学, 農学部, 教授 (60365872)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 緑色光 / LED / レタス / ベンサミアナタバコ / インゲン / クロロフィル / rubisco |
研究実績の概要 |
緑色光照射が植物の成長と株全体の光合成に及ぼす影響について調査を行った。本年度は緑系レタスのグリーンウェーブを供試材料とした。播種から17日間は白色蛍光灯で育苗を行い、33株/m2、44株/m2および55株/m2の3段階の栽植密度を設定して定植した。定植後1週間はすべての植物で赤青混合光で栽培し、次の2週間で緑色光添加区(以後、添加区)と緑色光無添加区(以後、無添加区)を設けた。無添加区は緑色光の代わりに赤色光を添加した。収穫日におけるレタスのバイオマス量は、栽植密度によって結果が大きく異なった。低密度の33株/m2および44株/m2では、添加区に比べて無添加区の株あたり乾物重が有意に大であった。55株/m2では、有意差はないが添加区の方が無添加区に比べて大となる傾向にあった。55株/m2において葉位別に葉身をサンプリングし、株の上位と下位に着生する葉身のクロロフィル量とrubisco量を比較した。上位葉および下位葉ともに添加区でクロロフィル量およびrubisco量が高い傾向にあり、とりわけ下位葉では添加区のそれらの量が高かった。可視光領域において緑色光は他の波長に比べて高い透過性を示す。栽植密度が高い場合には透過性の高い緑色光によって、下位にまで光が到達し、そのことが株全体の光合成を向上させたのではないかと推測された。緑系レタスで認められたこの応答が高等植物全般にも広く認められるのかを確認するために、インゲンおよびベンサミアナタバコでも同様に栽培を行った。播種から育苗までの栽培管理、光処理を開始するタイミングなどが必ずしもレタスとは同じではないため、これらの植物の栽培法について試行錯誤を行い、レタスよりも栽培期間を短く設定したほうが良いことなどが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
緑色光の透過性と植物工場内の群落構造における光環境の改善効果がレタスにおいて認められる傾向がでてきた。とりわけ、下位葉での光合成系タンパク質量が維持されている結果が得られていることが成果として大きい。またこれらの結果が高等植物全般に認められるかを調べるために、植物種を増やすことができていることも順調に進んでいることの表れと捉えている。
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今後の研究の推進方策 |
インゲンとベンサミアナタバコでの葉の光合成関連タンパク質量を定量することを進める。また緑色光によって光合成能力が高いと思われた葉について、CO2ガス交換速度を測定してその能力を評価する。また、下位葉での光利用効率が向上しているかを確認するためにクロロフィル蛍光測定を行い、光化学系IIの量子収率の測定を行う。また、光量子センサーを用いて、群落内の光環境が改善されているか、評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費について想定した金額よりも低く収まったことが理由としてある。国際学会に参加したが、中国であったために想定していた金額の半額以下で収まった。国内学会については、9月に愛媛県での開催学会に参加することを考えていたが、予定が合わず参加見送りとなったため、その分の旅費が未使用となった。また、論文作成費用として英文校閲、投稿料を予定していたが、論文投稿に至るまでにはまだ成果が得られていないため、その分の費用が未使用となった。さらに、消耗品は前年度に購入したものが使用可能であったため、その分の購入費がかからなかった。以上の未使用であったものについて、次年度は既に使用の目途が立っており、国際学会(カナダ)、英語論文の投稿、試薬・薬品の購入を予定している。
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