研究課題/領域番号 |
16K07964
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
山岡 賢 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, ユニット長 (70373222)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 乾式メタン発酵 / 作物残渣 |
研究実績の概要 |
本課題は、農村地域のバイオマスのうち有効利用が進んでいない作物残渣、刈り草、剪定枝等の利用拡大に向けて、乾式メタン発酵プロセスの安定性の向上を図るための基礎技術を開発する。乾式メタン発酵は、含水率60~85%の原料に適用できるので作物残渣等のバイオマスの利用に適するが、原料の破砕・混合の工程で目詰まりや噛み込みなどのトラブルが頻発してプロセスの稼働が安定しない。本課題では、乾式メタン発酵プロセスからの原料の粉砕や混合の工程の除外に向けて、液体培地に微生物群を集積し液体培地を介して固形原料に微生物群を移植してメタン発酵を進行させる手法を明らかにする。実験では、ラボスケールの乾式メタンプロセスを実験室内に構築し、同プロセスを年間通じて安定して運転し、同プロセスから供給される種汚泥及びメタン発酵を担う微生物群を用いて、原料への移植を試みる。なお、原料は乾燥稲わらを用いた。昨年度(初年度)の実験結果から、種汚泥から純水等の液体を加え撹拌後、固形分をフルイで取りのぞき、原料に添加してメタン発酵を試みたところ、短期的にガス発生が確認できたが、原料のpHが低下してガス発生が停止した。メタン発酵反応が発酵初期の酸発酵段階で停止したと考えられた。このため、今年度引き続きpHの低下を抑制することで、メタン発酵反応の発現及び継続につながらないかと考え、リン酸緩衝液や水酸化ナトリウム液等を原料に添加や種汚泥から微生物群の抽出に用いた。また、原料も乾燥稲わらより分解しやすいグルコースを用いることも試みた。それらによって、メタン発酵の発現、ガス生成につながったものの、メタン発酵の継続は最長で20日間程度に留まった。一方、ラボスケールの乾式メタンプロセスの発酵槽内では固液分離が進み、この液分による発酵発現が期待されため、新たに考案した発酵槽で試験を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験のため運転してきたラボスケールの乾式メタンプロセスの発酵槽内の状況を観察すると、当初原料の稲わらと多様な粒径の固形物を含む汚泥が混合した状態であったが、ほとんど乾燥稲わらのみを原料とした運転を1年以上運転を継続することで、発酵槽内は粗大な稲わらと微細な固形物を含む液体とで構成される状態となった。発酵槽内の液分を原料に供給することは容易と考えられるので、合わせて原料や発酵槽内の発酵残渣の移送を容易にできる発酵槽を検討し結果、発酵槽の縦断面をU字形状とすることを考案して、試作を行ったところである。来年度(3年目)は、試作したU字形状の反応槽でメタン発酵を試みる。 さらに、ラボスケールでのメタン発酵実験を繰り返す中で、小規模なメタン発酵に適した簡易な気体の体積の測定方法が見当たらなかった。本分野での研究開発の推進に役立てるため、簡易なガス体積の測定器(2種類)を考案し試作するとともに、同試作器の測定精度を検証し、論文に取りまとめ投稿した(査読中)。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度考案した縦断面をU字形状とした発酵槽を用いて、発酵試験を実施して、本課題の当初目標の達成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題の成果を国際学会への発表を投稿したところ、座長に任命いただき参加登録料を免除いただいた。また、メタン発酵に関して海外調査を予定していたが、中国黒竜江八一農墾大学生命科学技術院から招待を受けて同大学での講演と共に四川省成都市にある中国農業省のバイオガス研究所を訪問し、同研究所が中国の農村部に整備しているバイオガスシステムを見学する機会を得てメタン発酵システムの現場適用の知見が得られた。このため、年度当初の予定していた経費が節約できたので、次年度使用額が生じた。今年度は、取りまとめに向けて、試作したU字形状の反応槽でメタン発酵を試みるため、同反応槽の改造や一部項目に関して分析を外注することで、効率的な研究の推進を図りたい。
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