本課題は、農村地域のバイオマスのうち有効利用が進んでいない作物残渣、刈り草、剪定枝等の利用拡大に向けて、乾式メタン発酵プロセスの安定性の向上を図るための基礎技術を開発する。乾式メタン発酵は、含水率60~85%の原料に適用できるので作物残渣等のバイオマスの利用に適するが、原料の破砕・混合の工程で目詰まりや噛み込みなどのトラブルが頻発してプロセスの稼働が安定しない。本課題では、乾式メタン発酵プロセスからの原料の粉砕や混合の工程の除外に向けて、液体培地に微生物群を集積し液体培地を介して固形原料に微生物群を移植してメタン発酵を進行させる手法を明らかにすることを目的として実施した。実験では、ラボスケールの乾式メタンプロセスを実験室内に構築し、同プロセスを年間通じて安定して運転し、同プロセスから供給される種汚泥及びメタン発酵を担う微生物群を用いて、原料への移植を試みた。初年度,2年度前半の実験結果を踏まえ,固形原料に微生物群を効率的に移植する方法を実現する新型発酵槽を考案試作して,最終年度は,実験室で稲わらを原料に約2年間乾式メタン発酵を継続した発酵槽から発酵物を新型発酵槽に移して運転を開始した。結果,原料の粉砕や混合の工程や発酵槽内の撹拌を行うことなく120日を越えて安定してメタン発酵を実現できた。なお,メタン発酵の室内実験を実施する中で,室内実験に容易に利用できるバイオガスの体積測定方法を検討して,簡易な測定を考案した。
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