研究課題/領域番号 |
16K07968
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
叶 旭君 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (10708168)
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研究分担者 |
張 樹槐 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (90261429)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ハイパースペクトル画像計測 / リンゴ / 栄養診断 / 果実判別 |
研究実績の概要 |
本年度は、ハイパースペクトルカメラImSpector V10を用いてリンゴ成葉の栄養状態の空間的分布の可視化について検討した。実験では、昨年度と同様に弘前大学藤崎農場で栽培されているリンゴ樹より栄養状態が異なる成葉を採取しサンプルとした。各成葉サンプルに対してハイパースペクトル画像計測と窒素含有量の化学分析を行った。それにより取得したデータを用いて昨年度にすでに開発した窒素含有量の推定モデルを再構築した。その結果、モデルに用いた560、675、700nmの3波長またはそれらの付近の波長がリンゴ成葉の窒素含有量の予測に有効な波長であることが確認された。その3波長の画像をハイパースペクトル画像から抽出し、画像処理によってリンゴ個葉レベルの窒素含有量の空間的分布の可視化を行った。また、同ImSpector V10カメラを用いて、リンゴ樹体を対象にハイパースペクトル画像を計測し、同じような推定モデルの適用と画像処理を行い、リンゴ樹冠レベルの窒素含有量の空間的分布の可視化にも成功した。さらに、本年度に同じリンゴ葉サンプルのクロロフィル含有量の化学分析も加え、その個葉レベルと樹冠レベルの空間的分布の可視化にも成功した。以上より、ハイパースペクトル画像計測によるリンゴ樹の栄養状態の空間的分布の可視化・マッピング技術を確立した。また、本年度中日立マクセル株式会社で開発中のライススキャンのリンゴ成葉の栄養状態評価への適用可能性について検証を行った。その結果、以下の知見を得た:1)ライススキャンによるRGB画像データからでもリンゴ成葉の窒素含有量を推定することが可能である。2)リンゴ成葉の健康度を評価するための新たな葉色指数(LCI, Leaf Color Index)の開発に成功した。3)2)のLCIを基に、リンゴ成葉の健康度評価用の簡易なカーラーチャートを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に予定していた主な研究内容はおおむね順調に進展している。りんご樹の栄養状態の推定モデルと可視化・マッピング技術は既に構築しており、次年度に予定しているリンゴ樹の早期栄養状態と栄養診断についての研究の展開に大きく寄与していくと考えられる。また、日立マクセル株式会社開発中のライススキャン新製品のりんご成葉の栄養状態評価への適用可能性を確認することができ、リンゴ成葉の健康度評価用の新たなLCIと簡易なカラーチャートの作成に成功した。また、本年度に予定しているリンゴ収量推定モデルの構築を展開している。次年度から、これについての研究は今までの成果を基に、さらに進展していくと計画している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、窒素とクロロフィル栄養成分および果実情報の空間的分布の可視化・マッピング技術の検証について取り込んでいく。特に、樹冠レベルの栄養状況の可視化において、次年度にさらに樹体数を増やして、各樹体の栄養状態を評価するとともに、樹体間の栄養状態の比較評価を行う予定である。また、りんご特有な剪定、摘花、摘果などの生産管理作業が樹体の栄養状態評価および果実収量予測に及ぼす影響についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、まず、国際ジャーナルに投稿した英文論文はまだ査読中であり、受理されるまでは掲載料などが発生しなかったことがあげられる。また、研究成果を国際学会にて発表する予定としていたが、他業務との兼ね合いで国際学会などへの出張を行わなかったため、旅費が発生しなかったことがあげられる。これらの金額の次年度使用計画としては、論文掲載料として使用すること、学会への参加費と旅費に使用すること、などを計画している。
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