研究実績の概要 |
本年度は、前年度に構築したリンゴ成葉の窒素含有量の推定モデルを再検討した。具体的には、各成葉サンプルのハイパースペクトル画像計測によるスペクトル反射率のデータの一次微分値を算出して、それらと窒素含有量の化学分析値との統計解析を行った。その結果、前年度に特定した560、675、705nmの3波長のほかに、505nmの波長もリンゴ成葉の窒素含有量の推定に有効であることを明らかにした。さらに、その4波長の反射率データをハイパースペクトル画像から抽出し、新たに構築したモデルを適用して、リンゴ個葉と樹冠レベルの窒素含有量の空間的分布の可視化を行った。それにより得られた結果は、前年度のものと比較してより精度が高く空間的分布の可視化効果も向上した。
研究期間全体では、リンゴ樹の栄養状態の評価法及び可視化技術の開発に重点を置いて研究活動を実施してきた。ハイパースペクトル画像計測および化学分析を行って、少数の波長のスペクトルに基づいた窒素含有量やクロロフィル含有量の推定モデルを構築し、リンゴ成葉と樹冠レベルの窒素やクロロフィルの空間分布の可視化に成功した。そういった成果をもとに実装技術が確立すれば、リンゴ樹の簡易栄養診断への応用が大いに期待できる。また、ハイパースペクトル画像計測による研究の展開に合わせて日立マクセル株式会社で開発中のライススキャンのリンゴ成葉の栄養状態評価への適用性も検証した。その結果、ライススキャンによるRGB画像データでもリンゴ成葉の窒素やクロロフィル含有量を推定できることが確認でき、リンゴ成葉の栄養状態を評価するための新たな葉色指数(LCI, Leaf Color Index)及びそのLCIをベースにした簡易なカラーチャートの開発に成功した。以上の知見を踏まえて、今後新たな簡便なリンゴ樹栄養診断のデバイスの開発を検討する予定である。
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