本研究課題では,大気-群落光環境の時空間的不均一性が作物の成長過程においてどのように影響するかを明らかにすることを目的に,空間方法技術を用いて,次の成果を得た。 小型メモリ付き光量子センサ,定点カメラ,UAV(小型無人飛行機)を用いて,群落下層の光環境と作物の成長過程における時間的・空間的なばらつきや変化を把握するための時空間モニタリング手法を確立した。 3品種・3施肥水準で栽培したイネ群落を対象に,群落下層の光環境とLAI実測値から吸光係数を求めた。施肥量が少ない群落ほど吸光係数が若干高い傾向がみられた。成長が遅い分,相対PPFDも高い(下層まで光が届いている)傾向が見られた。品種の違いによる吸光係数の違いもみられた。 また,ほ場群落における光環境と3次元群落構造との関係を明らかにし,3次元群落構造を代表する群落高さから,群落内光環境を空間的に推定することが可能になることを示唆した。 さらに,イネ3品種3施肥水準3反復の27区画ほ場(15m x 40m)を対象に,約10日間隔で撮影したUAV画像から作成したイネ群落3次元モデルを用いて,群落下層の光環境およびLAIの時系列面的推定を試みた。ここでは,イネ群落3次元モデルを2株に相当する30cm四方でメッシュ化し,メッシュ平均値をイネ草高として,群落下層光環境と草高との関係式(相対PPFD=exp(-4.27*草高))および,3品種それぞれの吸光係数Kを適用してLAIを推定した。時系列で面的に推定することによって,品種の違いや施肥の違いによる生育の違いを時空間的に把握することができた。 以上,本研究課題を通して,これからのスマート農業や気候変動時代における高度栽培管理に向けた生育モニタリング手法における空間情報技術の可能性を示すことができた。
|