研究課題/領域番号 |
16K07970
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中嶋 洋 京都大学, 農学研究科, 准教授 (80172302)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | モデル化 / シミュレーション / テラメカニックス / 離散要素法 |
研究実績の概要 |
本研究において乾燥砂のモデルとする直線状に半径をオーバラップさせた同じ半径からなる3個の球からなる人工的な土モデル(MSM-L3モデル)をPP材料より製作完了した.また,現有するBekker法の土壌力学パラメータ計測装置のうち,圧力ー沈下実験装置によりMSM-L3モデルの土壌パラメータを求めた結果,締め固め条件にもよるが,n=0.8018, Kc=0.034697, Kphi=4.3284程度の値となることが判明した. せん断応力ーせん断変位については,装置構成の見直しを行なったため,計測装置が未完成となった.したがって,土壌力学パラメータの残りのせん断定数Kと粘着力c,内部摩擦角φはまだ得られていない. DEMパラメータとの連携については,圧力ー沈下実験を模擬するべく可能な限り実験装置と同じ条件を設定した3次元DEMによる平板貫入解析を実施した.用いた要素形状もMSM-L3モデルである.なおDEM解析はオープンソースソフトであるYADEを用いた.解析結果は,粒子間摩擦係数に依存するが,摩擦係数が0.48の場合,n = 1.3978,k_c = -0.1108,k_phi = 22.441であることが判明した. これらの結果より,実験結果と解析結果の相違が発生した.なお,実験においては土モデルが緩い条件であることが予想され,また解析も計算時間の関係で,実験結果と同じ土モデルの締め固め状態が得られているとは言いがたい.今後,このような点を更に精査し,実験と解析の間の土壌常数の相違についての考察を深めること,合わせてせん断応力ーせん断変位測定を実現する予定である. また,数値解析の高速化の準備として,既存の計算機環境を更新し,並列計算の準備を行なった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
人工土モデル(MSM-L3モデル)の製作に時間がかかったが,この人工土モデルを用いて圧力ー沈下関係計測を行なう事ができた.詳細な締め固め条件についてはまだ未実施であるが,実験範囲についてのBekkerの土壌パラメータを得ることができた.一方,せん断応力ーせん断変位関係の計測については,実験においてMSM-L3モデルの自重による締め固め効果が不十分なことが明らかとなり,せん断応力が当初予想よりも小さいことが予想された.このため,SR-2型のせん断リングを流用するせん断応力計測装置のねじりトルクの見積りを再度検討する必要が発生したため,実験装置の完成には至らなかった. また数値解析について,ここ数年実施中の自前の3次元DEM解析ソフトの開発作業が完了していないため,オープンソースソフトとして使用できるYADEを用いることとし,テラメカニックスの相互作用問題への適用性を確認しながら準備を行った.このため,実験とほぼ同じ条件での圧力ー沈下解析を実施できたが,十分な解析パラメータの検証には至っていない.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度前半でMSM-L3モデルのせん断応力ーせん断変位関係の計測を実施するとともに,圧力ー沈下関係についても乾燥標準砂をも対象として実験データの取得を行なう.これにより,砂,MSM-L3モデルでのBekkerの土壌力学パラメータについての詳細な検討が実現すると考えている.また,3次元DEM解析についても,粒子間摩擦係数の調整によりMSM-L3モデルの自重圧密条件を可能な限り実験条件に近似した解析を行ない,数値解析でのDEMパラメータと土壌力学パラメータの関連性の検討という本題に入る予定である. また,粘性土についても既に入手済みであり,準備ができ次第,圧力ー沈下関係ならびにせん断応力ーせん断変位関係を計測し,更に一般的な土を対象とした際のパラメータの関連性の検討を行なう予定である. 平成29年度後半は,解析時間の短縮を目標として3次元DEMの並列計算の本格的な準備を行なう予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初見込んでいた出張ならびに学生謝金について,今年度は執行を見送り,最新並列計算環境を整備するために現有計算機の機器更新を主眼としたため,若干の差額が発生してしまった.
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度においては,更新した計算機による並列計算を実施予定であり,また学会発表旅費ならびに学生謝金についても計画通り執行予定である.
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