TPP 妥結を受けて国民の間には輸入食品の安全性に対する不安が増している。国内に限っても、近年メディアに取り上げられた異物混入問題は記憶に新しく、国民の食を守ることの重要性はこれまで以上に高まっている。本研究は、「食の安全」に関わる技術の1つとして、異物混入問題に焦点を当て、従来の探知技術では検出の難しい非金属異物、特に生物系異物の検出方法について技術研究を進めた。食品の製造現場で行われているX線検出法は、金属異物に対してはたいへん有効ではあるが、非金属異物や生物系異物では無力であり、実質的には人の目視による検品以外には手がなく、消費者による「発見」という形で表面化してしまう。2020 年に向けた我が国食 品の安全確保技術の1つとして、光センシングによる新しい異物検出技術について検討した。 様々な流通食品のうち製造時の加工作業の過程で異物が混入しやすく発見されにくい肉加工品(ハンバーグやコロッケなど)と麺を対象として、非破壊で混入異物の種類を推定する手法について検討した。1)混入異物単体、2)混入先の肉加工品、3)混入先の肉加工品に人工的に異物を混入した試料の3種に対してハロゲン光源を用いて光を照射し、その反射光の近赤外域のスペクトルを解析して、混入異物を特定、あるいは推定するためのポイントとなる固有波長の候補を選び出し、これらの波長におけるスペクトル元波形または数値二次微分値を入力、混入異物の有無を出力とする、ニューラル・ネットワークによる混入推定モデルを作成した。モデル作成時に用いたデータとは異なる未知データで、作成した異物混入モデルの推定精度を評価したところ、82%から95%を正しく判定できた。ただし、混入先の食品によっては誤判定率も5%~大きいもので18%近くあり、推定精度を高めるためにはより多くのデータの集積を行って、モデルの再学習が必要であるとの課題も残った。
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