研究課題/領域番号 |
16K07974
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研究機関 | 桐蔭横浜大学 |
研究代表者 |
佐野 元昭 桐蔭横浜大学, 医用工学部, 教授(移行) (90206003)
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研究分担者 |
杉本 恒美 桐蔭横浜大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授(移行) (80257427)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 振動数解析 / 植物の水ストレス / 超節水精密農業 |
研究実績の概要 |
植物の水ストレスを知る方法として、我々は葉の固有振動数の日周変動に着目しており、健全な葉の場合、葉柄の弾性による葉の固有振動数は、日中増加し夜間減少するが、水ストレスが増加すると、日中の固有振動数が減少に転ずることを見出している。これらの基礎実験は、レーザ変位計やハイスピードカメラ等を用いて計測されたが、24時間で自動計測を実施しようとする場合、レーザ変位計では、葉の運動によりレーザ光が葉から外れたり、ハイスピードカメラでは、映像データが膨大になるなどの問題があった。 ところが、実際の葉の固有振動数は概ね10 Hz以下であるので、サンプリング定理により20 Hzを上回るサンプリング周波数であれば、その振動成分は検出可能であり、フレームレート30 fps(1秒に30コマ)の通常のCCDカメラでも十分なはずである。そこで本研究では、葉の振動変位の自動計測に、扱いが容易でデータ量も小さい通常のCCDカメラが利用できないか検証を行った。そしてその際、映像の画質やシャッタースピードが遅くなることにより生じる画像のブレなどが、葉の振動変位を求めるために行う相関追尾に問題がないかを検討した。 その結果、通常のCCDカメラによって撮影された画像でもシャッタースピードや画質に問題はなく、相関追尾はハイスピードカメラとほぼ同等の精度で行うことができた。それに加え、むしろハイスピードカメラの場合より処理する画像の枚数が1桁以上少なくなったので、処理時間は1桁以上速くなった。また、30 Hz のサンプリング周波数についても、理論通り葉の固有振動数を推定するには十分であった。 したがって、葉の固有振動数を求めるのであれば、通常のCCDカメラで十分であり、ハイスピードカメラを用いるより短時間で処理が可能で、動画ファイルの容量も小さくなるので、むしろ高価で扱いが面倒なハイスピードカメラよりも計測に向いていることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、CCDカメラのシャッタースピードについては、画像のブレをなくして精度良く振動変位を相関追尾するために1/1000 s程度を想定し、そのようなCCDカメラを探していた。しかし、実は現在普通に市販されているCCDカメラでも、シャッタースピードは十分であることが分かり、結局、シャッタースピードの速いCCDカメラは購入しなかった。この結論を得るまでに多少時間を要したが、想定の範囲内であった。 また、今年度の目的は、従来ハイスピードカメラで行っていた計測が通常のCCDカメラで可能かどうかの評価に主眼が置かれていたため、植物に関係した温湿度、光量などの実験環境計測は特に重要ではなかった。そのため、それらに関係する物品購入も結局年度末になってしまった。しかし、実験の進捗としては、概ね予定通りである。
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今後の研究の推進方策 |
通常のCCDカメラを用いた、葉の振動計測システムを本格的に構築し、まず、それを用いて相関追尾によって葉の振動権変位を計測し、固有振動数を、夜間を通じて継続的に計測する。その際、夜間は振動撮影時だけ照明を点ける必要があり、その仕組みを検討している。 相関追尾による方法に目処がついたら、今度は、特定の葉ではなく、葉が写った映像としてのゆらぎについて、検討を開始する。そのために、葉が写った映像と、葉がない映像との揺らぎの分布を計測したり、あるいは、葉の部分を画像的に抽出する方法(色や赤外線)の検討も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
データロガーについて、当初高速なものを検討していたが、通常のサンプリング速度のもので十分であったので、そちらに切り替えて価格を抑えた。またCCDカメラもシャッタースピードの速いものを検討して購入する予定であったが、予備実験の結果、通常のCCDカメラで十分であったため購入を取りやめた。水分センサも既存のもので代用したため、新規に購入はしなかった。さらに、消耗品で計上した蛍光灯やイレクタ等も在庫でカバーした。旅費についても、今回は大学の研究費から支出したので、使用しなかった。人件費は、予算内に収まるように日程を調整した結果、若干の残額が生じた。 一方、研究補助員が葉の振動解析をスムーズに行えるよう、解析ソフトのライセンスを追加購入した。またデータロガー専用の温湿度センサとCO2センサを購入した。 それらを合わせた結果、最終的に、物品費は当初の予算より数万円節減になった。
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次年度使用額の使用計画 |
実験補助員に対する予算が若干不足しており、日数を少なめに調整しているので、そこに当て、日数を若干増やす予定である。
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