研究課題/領域番号 |
16K07975
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
星 岳彦 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (80219162)
|
研究分担者 |
瀧川 義浩 近畿大学, 先端技術総合研究所, 准教授 (60446010)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | マイクロ分光器 / トマト群落 / CO2センサ / 分光ガジェット / デジタルファブリケーション / Arduino |
研究実績の概要 |
コンピュータを付加した低コスト小型センシングシステムに、生体情報モデリングソフトウェアを内蔵し、その計測地点の局所的環境計測値から、植物物質生産、植物光形態形成、病害微生物の感染可能性などの推定値を指標として、表示・警報・記録する小型ツールを開発する。 前年度3万円/台程度の部品コストで開発・製造できた分光ガジェットについては、マイクロ分光センサが改良され、より高感度になったのを受けて、回路設計とプログラムを改良した。和歌山県農業試験場と共同して、養液栽培トマト群落内外の4か所に設置して400nm~800nmの光スペクトル環境を連続測定した。その測定結果より、群落のLAIを推定したところ、当初のLAIが2.63だったものが、摘葉後には1.89に低下した。摘葉による受光体勢の変化を数値化することができた。また、植被面、群落中位、群落下面のフィトクロム平衡値(PE: Pfr/Pr)を推定したところ、群落下面の午前と午後で0.05程度の変動があり、植物体の部位により、太陽光の入射状況の変化によるPEの日変動に違いがあることが明らかになった。群落の多点の光スペクトルを低コストで連続測定できるようになり、生産者の植物生産温室の群落光環境、光形態形成の非破壊測定の可能性を示すことができた。本研究成果を国際会議で発表することができた。また、光合成評価ガジェットについては、Farquharの光合成モデルを利用し、9000円台と2000円台の新型低コストCO2濃度センサを用いてArduino汎用CPU基板をプラットホームにした試作機を製造し、設置された環境を計測しながら、光合成速度のポテンシャル値をリアルタイムに表示できることを確かめた。そして、光環境を測定する病害防除支援ガジェットの評価を行い、その結果、機体毎に測定値のバラツキがありその原因解明を行うとともに修正プログラムの作成を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分光ガジェットの改良を進めることができ、3Dプリンタを使って筐体製造し、製品に近い完成度にすることができた。学会発表したところ、大学や県試験場の研究者から、入手・自作したいという問い合わせが数件あり、研究成果の活用が期待できる。また、光合成評価ガジェットは、本体の試作がほぼ完成し、この機材を病害防除支援ガジェットと共通で使える見通しも得られ、おおむね順調に進展していると進捗状況を評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
分光ガジェットについては、成果を研究論文として投稿中で、今年度中に掲載し、成果を公表する。光合成評価ガジェットの筐体を設計しで3Dプリンタで製造し、製品に近い完成度にする。また、環境条件を変えた栽培試験を実施して乾物生産量を実測し、モデルパラメータのチューニングを行い、律速要因の表示機能を付けるなどの実用性を高めたプログラムの改良を実施する。また、病害防除支援ガジェット試作機を製造する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
CO2センサが、予想以上に低コスト化(1台22,000円から2,000円台の製品が発売された)したため、今年度の物品費が予定より少なくなった。また、アルバイトが体調不良で長期に休みを取ったため、謝金等に今年度残額を生じた。残額は、最終年度で、栽培試験の実施および必要な試作機台数を増やすための部品購入のために、物品費として使用したいと計画する。
|