研究課題/領域番号 |
16K07976
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研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
那須 潜思 仙台高等専門学校, 知能エレクトロニクス工学科, 教授 (80208066)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 腸内細菌検査 / 画像処理 / サルモネラ / EHEC / 感度 / 特異度 |
研究実績の概要 |
H28年度には,主に次の検討課題①~④について検討を進めた。 ①SS,CT-SMAC,EMACⅡの各寒天培地において,生育したコロニーの発色の観察と撮影,②検体撮影時の光源形状および配光の検討,③判別のためのアルゴリズムの検討ならびにプログラムの開発,④培養された病原菌および非病原菌を対象とした識別の予備実験 検討課題①の実験として,BMLフードサイエンスの協力を得て,同社の検査センターで検査終了後の実検体の観察ならびに撮影を行った。陰性検体,陽性検体を併せて1000検体程度撮影し,病原性が疑われるコロニーと疑いのないコロニーについて,基本的な発色の特徴を得ることができた。検討課題②については,光源の形状および透過・反射などの配光方法の違いにより,取得される画像の見え方の違いを比較検討し,適当と考えられる光の当て方を決定した。検討課題③に関しては,撮影した検体画像における各コロニーの色相値と輝度値を詳しく調べ,その結果を基に判別に適する方法を検討し,基本的な判別方針を決定した。その方針に沿った判別プログラムを作成した。現時点では,撮影画像からの培地部分の切り出しなどは手動でおこなっている。検討課題④について,課題①で撮影した画像に対して識別の予備実験をおこなった。現状の基本的な判別方法では,感度を100%にすると,特異度が非常に低い問題があることがわかったため,病原性・非病原性のコロニーの特徴を詳細に調査して,判別方法の改善をおこなう必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H28年度の予定は,主に次の①および②の項目について検討を進めることであった。①コロニーの色の違いをより鮮明にするための配光および光源波長などの撮影方法の検討,②コロニーの色の特徴を明確にする解析方法の検討 このうち項目①における配光の検討に関しては,光源形状による取得画像への影響,および透過型照明と反射型照明の発色に違いや反射型照明においては背景の色の違いによる取得画像の特徴などを詳細に検討した。一方,光源波長に関しては,当初は発光波長可変の光源を購入して,光源の波長の違いまでも検討する予定だった。しかし,特にEMACⅡ培地上では多様に発色するコロニーがあることがわかったため,先にコロニーの発色を計測すること先決と考え,H28年度に分光器を購入して,それを用いたコロニーの色の分析方法について検討中である。関連して,波長可変光源を用いた実験は行わずに基本的な白色光源のみを使用して,撮影された画像の特徴の解析に留めた。 次に,項目②に関しては,撮影した検体画像における各コロニーの色相値と輝度値を詳しく調べ,その結果を基に判別に適する方法を検討した。その結果,SS培地におけるサルモネラの判別については,輝度情報だけを用いることで対処できることがわかったが,検出されることはほとんどない赤痢菌にも対応可能とするためには,今後色相も判定条件に加える必要がある。CT-SMAC培地におけるO157の判別は,主に純粋菌を混入した疑似検体を対象として検討において,色相値により判別が可能であることがわかった。EMACⅡ培地におけるEHECの判定については,当初の予想以上に発色のパターンが様々であったため,より多くの陽性検体の観察が必要であることがわかった。 以上のように,一部に当初の予定とは異なった進捗となった部分があるものの,全体的にはおおむね順調な進捗状況と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定では波長可変の光源を用意して,波長を変えてコロニーの識別に適切な波長を決定する積もりであったが,特にEMACⅡ培地上で生育するコロニーは,発色や中央部と周辺部の組み合わせなどに多様な組み合わせがあることがわかってきた。このため,光源の波長を変えて撮影する前に,コロニーの発色を計測することが先決であると考え,H28年度は,当初購入予定であった波長可変光源は買わずに,コロニーの発色を測定するためのポータブル分光器を購入した。しかし,この分光器を用いて,直径1mm程度のコロニー部分だけの分光データを取得することは容易ではないことがわかった。そのため,H29年度は,ポータブル分光器を用いて,狭い領域に存在するコロニーの色調を測定する方法についての検討がまず必要である。その結果から,特定の発光波長の光源を用いることがコロニーの識別に有効であると予想された場合には,波長可変のLED光源等を購入して,波長を変えて撮影することで,識別性能の向上が可能であるかどうかについて評価実験をおこなう。 また,当初から予定されていたように,陰性および陽性のコロニーの識別における感度・特異度を向上させるために,発色・輝度に関する詳しい情報の収集が必要である。そのため,さらに多くのサンプルの撮影をおこなう予定である。これについては,H29年度もBMLフードサイエンスに撮影サンプルの提供についてのご協力をいただいておこなう。特に,発色のパターンが多様であるEMACⅡ培地で培養された検体については,多くのサンプルを撮影することが重要であり,複数回BMLフードサイエンスの検査センターを訪問して,検体の撮影を行うことが必要である。
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