腸内細菌検査の5菌検査における5種の病原菌(サルモネラ,赤痢,O26,O111,O157)の検出ために,SS寒天培地とEMACⅡ寒天培地が利用されるが,これまでに撮影された画像の多くは,その特徴を病原菌の判別プログラムに反映させてきたため,自動判別実験用にBMLフードサイエンスの協力を得て新たに検体の撮影を行った。 また,判別プログラムに関しては,昨年度SS寒天培地について実現したシャーレ内部および菌集落の自動抽出を,EMACⅡ寒天培地でも実行できるようにした。菌集落の抽出により病原菌の判別精度の向上が得られた。EMACⅡ寒天培地によるEHEC(O26,O111,O157)の判別は,EHECとそれ以外の菌集落の発色が中心部分の色調だけだと似ているものがあるため,集落中心付近と集落周辺部の両方の色情報を用いて判別する方法が有効であった。なお,菌集落自動抽出段階等で抽出処理に失敗して判別不能となるケースがあったが,致命的である陽性検体の見落としを避けるため,判別不能な場合は全て「陽性」疑いとして処理するアルゴリズムとした。 自動判別実験では,サルモネラおよびEHECの各陽性検体と陰性検体をそれぞれ20検体以上用意して用いた。赤痢については,大手検査センターでも発生率がほぼ0(10年間に1件あるかどうかのレベル)であり,検体の入手ができなかったため実施していない。陽性検体を陽性と判定した割合(感度と呼ぶ)と陰性検体を陰性と判定した割合(特異度と呼ぶ)についてまとめた結果は,サルモネラでは感度100%,特異度87%,EHECでは感度100%,特異度60%であった。
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