研究実績の概要 |
ラット膵ランゲルハンス島 (膵島) の超低温保存に関する研究を重点的に展開した。新規凍害保護物質 (CPA) としての可能性が示唆されているカルボキシル基導入ポリリジン (CPLL) のラット膵島に対する効果を調べ、その限定的有効性を示す実験結果をとりまとめた論文がCryobiology誌に受理された (Nakayama et al., 2019)。
CPLLのラット膵島に対する凍害保護効果に関する研究成果の概要は以下の通りである。30%エチレングリコール (EG) を細胞膜透過型CPAとして含有するラット膵島用のガラス化保存液 (Yamanaka et al., Cryobiology誌, 2016) において、細胞膜非透過型のCPLLを20%の濃度で添加すると、加温後の膵島蘇生率が有意に改善された。EGの一部たりともCPLLで置換することはできず、15% DMSOと15% EGからなるガラス化保存液に対してCPLLを添加しても蘇生率改善には無効だった。一度に10個の膵島をガラス化するクライオトップデバイスだけでなく、50個の膵島を一括処理できるナイロンメッシュデバイス (Yamanaka et al., Biopreservation & Biobanking誌, 2017) を用いたときもCPLLが持つ凍害保護の補填効果は発揮された。
ウシ卵母細胞の超低温保存に関する研究では、成熟卵母細胞 (M-II期卵子) のガラス化保存におけるナイロンメッシュデバイス適用の可能性について、2018年9月の第111回日本繁殖生物学会でポスター発表を行った。その他、共同研究成果として、論文3編 (Masaki et al., Stem Cell Reports誌, 2018; Chung et al., Animal Biotechnology誌, 2019; Goto et al., Nature Communications誌, 2019) と著書1編 (Hirabayashi & Hochi, Methods in Molecular Biology Bookシリーズ, 2019) を発表した。
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