研究課題/領域番号 |
16K07988
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
塚田 光 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (20343212)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | 成長ホルモン受容体 / 成長ホルモン / ニワトリ / Sex-linked dwarf / インスリン / インスリン負荷試験 / 糖負荷試験 |
研究実績の概要 |
申請者は現在までに3品種(白色レグホーン;WL,卵用鶏、ロードアイランドレッド;RIR,卵肉兼用鶏、白色プリマスロック;WPR,肉用鶏)から2つの異なる成長ホルモン受容体(GHR)遺伝子変異を同定した。これらGHR欠損型矮性品種は、体が小さく、足が短いなどの外見的に特異な特徴がある。組織重量は腹腔内脂肪の蓄積が多く、免疫系の器官が小さくなることが明らかとされた。 GHRのmRNA発現は肝臓に多く、続いて精巣、腎臓、脳、筋肉、胸腺、ファブリキウス嚢、脾臓等に発現している。白色レグホーン品種(細胞膜上にGHRが存在しないタイプ)において正常型と比較してインスリン抵抗性試験を行い異常型ではインスリン感受性が高いことを示唆した。2つの異なるGHR異常はWL/RIRとWPRに見られ体重、成長率等の点から比較が困難である。申請者はこの異常遺伝子を名古屋大学鳥類バイオサイエンスセンターで維持されている高度近交系GSP系統に導入しコンジェニック系統の作出を行っている。これらのコンジェニック系統とGSP(カウンターパート)を比較した。 高度近交系統であるGSP系統へ戻し交配し、コンジェニック系統の作出を試みている。15世代迄の戻し交配を行い、2つのタイプの成長ホルモン受容体異常ニワトリにおいても糖負荷試験、インスリン負荷試験を行った。インスリン負荷試験では両系統ともインスリン感受性の増加が見られた。糖負荷試験では通常血糖へ戻る際、血糖値の低下が確認された。このことはインスリン感受性が高いため分泌されたインスリンの効果が過剰に現れたためと推測できる。糖負荷試験においてはインスリン濃度の測定をおこなった。16世代の供試鶏を用いてRNAseqによる遺伝子解析を行う準備をしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請者は2つの異なる成長ホルモンん受容体突然変異ニワトリを同定し、この2種類の遺伝子変異を名古屋大学鳥類バイオサイエンスセンターで維持している高度近交系GSPに戻し交配を行い15世代を得ることが出来た本年年度はこのニワトリを親世代としてRNAseqによる遺伝子解析を目的としていた。しかしながら、実験鶏舎の配電盤の突然の故障から、実験鶏舎の大幅な改修工事が行われ、ほぼ六ヶ月間に渡り、次世代の作出が困難であり、次世代の作出ができなかった。現在急ピッチで実験個体の作出をこころみている。
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今後の研究の推進方策 |
現在迄の進展状況で述べた通り、供試鶏の作出が遅れている。現在、随時サンプリングを行いRNAseqに供試するサンプルの調整を行っている。2つのタイプの成長ホルモン受容体異常ニワトリを用いインスリン負荷試験を行った結果、両系統ともにインスリン感受性が高くなり、耐糖能試験で2つのGHR異常系統に違いが見られるため、先行研究で示されているインスリン作用機序に関わる遺伝子をピックアップし、mRNA発現解析の準備を行っている。現在迄に点変異系統のサンプリングが終了しているため、この系統から調査を進めていく予定である。 当初お計画より遅れているが、上記のmRNA発現解析を行うとともに、当初の計画に従い、原因遺伝子の同定を行う。そのための拱試動物の作成を急ピッチで進める。得られた候補遺伝子をスクリーニングを行い、成長ホルモンがインスリン感受性・糖代謝作用におけるインスリン作用メカニズムを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験鶏舎の配電盤の故障・実験鶏舎の大規模改修のため、拱試動物の作成が約六ヶ月遅れたため。
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