研究課題/領域番号 |
16K07990
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
原山 洋 神戸大学, 農学研究科, 教授 (30281140)
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研究分担者 |
中嶋 昭雄 神戸大学, 学内共同利用施設等, 研究員 (70397818)
坂瀬 充洋 兵庫県立農林水産技術総合センター, 北部農業技術センター, 上席・主任研究員 (70463396)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 応用動物 / 畜産学 / 雄性繁殖能力 / 精子 / 人工授精 / ウシ |
研究実績の概要 |
・実験1 サンプルの準備と性状検査:ウシ(黒毛和種)15頭から新鮮射出精子(64サンプル)を採取した。精子の一般性状を調べ,サンプル毎に成績を記録した。廃用となった雄個体から精巣を採取し,実験3で使用した。 ・実験2 先体耐凍能判定法の精度向上に関する取り組み:専門業者に委託して作製した抗SPACA1抗体はリン酸化型SPACA1とは反応しないことが判明したので,市販の抗SPACA1抗体を用いて研究を継続した。以前より蓄積していた精巣上体尾精子および実験1で準備した射出精子を用いて行った免疫染色により,「SPACA1が正常な分布を示す精子の割合」について,大きな個体差が存在すること,チロシンリン酸化型タンパク質が正常な分布を示す精子の割合と有意な正の相関関係を示すこと,および凍結保存後の正常先体率・凍結保存精子を用いた人工授精での受胎率と有意な正の相関関係を示すことを明らかにした。以上の成績はSPACA1の分布状態の正常性が精子先体耐凍能の正確な判定のマーカーとして有用であることを実証している。他方,検査サンプルの絞り込みのための精子鞭毛機能の検査では,運動時の頭部のローテーションの有無が活力検査の新指標となり得ることを見出した。さらにこの指標を加味した基準で凍結保存精子の炭酸水素ナトリウムに対する反応性を判定した際にサンプル間での格差が観察されたが,この格差を精子耐凍能の判定に利用できる可能性を示唆した。 ・実験3 先体耐凍能判定法の原理解明に関する取り組み:精子から抽出したタンパク質を用いた生化学的な実験により,SPACA1が細胞膜中の脂質ラフトに局在することを示唆した。他方,外来SPACA1を発現させた体細胞の低温耐性を調べる実験では,低温処理時に発生した制御不能の細胞凝集反応,外来SPACA1の発現量の不安定さ,レポーター分子の発現に伴う細胞特性の変化などの問題が生じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
兵庫県立農林水産技術総合センター・北部技術センターとの緊密な連携により,当初の予定数以上のサンプルを対象とした一般性状検査を完了し,凍結保存精子を作製し,さらに精巣も入手できた。これらのことから,実験1の目標は十分に達成できたといえる。実験2においてもSPACA1の分布状態の正常性が精子先体耐凍能の正確な判定用のマーカーとして有用であることを実証するという十分な成果が得られた。さらに精子耐凍能をより正確に判定するための鞭毛運動の新たな指標を提案できたという予定外の成果も得られた。実験3では先体耐凍能判定法の原理解明に重要な精子内でのSPACA1の局在に関する情報を得た。しかしながら外来SPACA1を発現させた体細胞を用いた実験では解決すべき複数の技術的な問題が見いだされた。概して研究課題全体の進行は順調で,目標を概ね達成できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の目標を概ね順調に達成でき,実験2については予定した課題を終了した。平成30年度には引き続き下記の研究課題を遂行する。 ・実験1「サンプルの準備と性状検査」の継続 ・実験3「先体耐凍能判定法の原理解明に関する取り組み」 の継続と追加課題の実施:(追加課題)SPACA1の正常分布率が低い精子を用いた人工授精での低受胎の原因を究明する目的で,SPACA1の正常分布率の違いが精子の受精能力に及ぼす影響を体外受精法により検討する。
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