研究課題/領域番号 |
16K07991
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
橘 哲也 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (80346832)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ニワトリヒナ / 摂食行動 / 炎症性物質 |
研究実績の概要 |
本研究では、細菌等がニワトリヒナに感染した際にニワトリヒナの摂食行動が抑制されることに注目し、ニワトリヒナの摂食調節機構における炎症性物質の役割を明らかにすることを目的とした。そのため、平成29年度の研究計画では①これまでに未調査の炎症性物質を外因的に投与した場合の摂食反応の調査、および②ヒナの摂食調節における内因性の炎症性物質の役割の解明について調査することとした。①については、腫瘍壊死因子とインターフェロン、およびプロスタグランジンD2の作用について調べた。その結果、腫瘍壊死因子様サイトカイン1A(TL1A)とプロスタグランジンD2の脳室内投与がニワトリヒナの摂食を抑制することが明らかにし、またインターフェロンαおよびインターフェロンγは摂食に影響を与えないことを明らかにした。なお、プロスタグランジンD2のみ腹腔内投与後の摂食反応も調べたが、他のプロスタグランジンと違い摂食に影響を与えないことが明らかとなった。②についてはグラム陰性菌の細胞壁成分であるリポポリサッカライドを投与した後の炎症性物質の間脳におけるTL1Aとインターフェロンの遺伝子発現量を調査した。その結果、間脳におけるTL1Aの遺伝子発現量が減少し、インターフェロンγでは遺伝子発現量の増加が見られた。以上の結果から、グラム陰性菌の感染によって脳内TL1Aおよびインターフェロンγの合成が変化するが、それらがグラム陰性菌による摂食抑制作用にどのように関わっているかについては今後の検討が必要であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニワトリヒナの摂食調節機構における炎症性物質の役割を明らかにするために、腫瘍壊死因子様サイトカイン1A(TL1A)と各インターフェロンン(インターフェロンαおよびインターフェロンγ)、およびプロスタグランジンD2を脳室内投与した場合の摂食量の変化を調べた。その結果、TL1AおよびプロスタグランジンD2がニワトリヒナの摂食を抑制することが明らかとなった。また、プロスタグランジンD2については腹腔内投与も実施したが、摂食量に影響が見られなかったことから、このプロスタグランジンは中枢に作用して摂食を抑制することが明らかとなった。昨年度および今年度の成果により、ニワトリヒナの摂食を抑える炎症性物質を特定することができた。続いて、これらの炎症性物質が感染時に作用するかを明らかにするため、グラム陰性菌の細胞壁成分であるリポポリサッカライド(LPS)を腹腔内投与した後の炎症性物質の間脳におけるTL1Aおよびインターフェロンの遺伝子発現量を調べた。その結果、LPSによってTL1Aの遺伝子発現量が減少し、インターフェロンγの遺伝子発現量が増加することが明らかとなった。以上の結果から、感染に関わる炎症性物質を特定することができた。現在、炎症性物質が脳内の摂食調節因子の遺伝子発現量に与える影響や、炎症性物質間の相互作用、および炎症性物質が糖質および脂質代謝に与える影響についても予備実験を進めている。以上のことから、本研究は概ね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、インターロイキン1βとTL1A、および各種プロスタグランジンがヒナの摂食を抑制すること、そしてLPSによって遺伝子発現量が変動することを明らかにした。次の段階として、絶食状態における炎症性物質の遺伝子発現量や、炎症性物質が脳内の摂食調節因子の遺伝子発現量に与える影響や、炎症性物質間の相互作用について、主に遺伝子発現量の変化について調査することで、これらの炎症性物質の作用機序を解明していく。これまでに見出したニワトリヒナの摂食に影響を与える物質のうち、特にプロスタグランジンE2の作用が顕著であることから、プロスタグランジンの作用機序を中心に研究を展開していく予定である。また、プロスタグランジンによる糖質および脂質代謝の変化や、これまでに見出した作用がニワトリ品種間で異なるかについて調べていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
残金が小額なため必要な実験試薬を購入できなかったこと、また本年度の研究が概ね順調に進んだため当該実験試薬を早急に購入する必要性が低かったことから、次年度で使用することとした。
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