本研究では細菌等がニワトリヒナに感染した際にニワトリヒナの摂食行動が抑制されることに注目し、ニワトリヒナの摂食調節機構における炎症性物質の役割を明らかにすることを目的とした。そのため、平成30年度の研究計画では①細菌性物質の他にウイルス関連物質がニワトリヒナの摂食行動にどのような影響を与えるか、②ウイルス関連物質が炎症性物質およびその合成酵素の遺伝子発現にどのような影響を与えるか、および③病原体関連物質および炎症性物質がニワトリヒナの脳内摂食調節因子の遺伝子発現にどのような影響を与えるかの三点について調査することとした。①については、合成二本鎖RNAであるポリICを脳室内および腹腔内投与するとニワトリヒナの摂食行動が抑制されることを見出した。②については、ポリICを脳室内および腹腔内投与した後の脾臓における炎症性物質の遺伝子発現を調べたところ、ポリICが炎症性物質の発現を促すことを明らかにした。③では、LPSおよびポリICを腹腔内投与した後の間脳内摂食調節因子の遺伝子発現を調べた。その結果、LPSを投与した場合には摂食促進因子であるNPYの遺伝子発現量が増加すること、そして摂食抑制因子であるヒスタミンの合成酵素の遺伝子発現量が増加することが明らかとなった。またポリICを脳室内投与すると、間脳内のNPYおよびヒスタミン合成酵素の遺伝子発現量が増加した。さらに、LPSを腹腔内投与した場合、およびポリICを脳室内投与した場合にはプロスタグランジンの合成酵素の遺伝子発現量が増加していた。以上の結果から、細菌およびウイルスの感染による摂食抑制には本研究で調査した炎症性物質に加えてヒスタミンが関わっている可能性を示唆した。なお、摂食促進因子であるNPYの遺伝子発現量が増加したことから、感染による食欲低下を補うための機構がニワトリヒナの脳内に備わっている可能性が示唆された。
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