研究課題
ウシで後代検定に供した際に人工授精後の受胎率が1割に満たない種雄牛候補が存在しており、遺伝的背景や精液性状検査により発見できないため新たな評価指標が求められている。ヒトでは不妊症や老化に関連した精子核DNAのメチル化異常が示され、ウシでも精子核DNAメチル化の関与が注目されている。本研究ではエピゲノム情報を取り入れたウシ精液の新たな評価法の開発のため、網羅的なメチル化状態の解析を行う手法としてヒト用メチル化解析マイクロアレイを利用した解析を行った。合計21サンプルの黒毛和種由来凍結精液について体外受精後の胚発生率の異なるグループ間あるいは人工授精後の受胎率の異なるグループ間での比較解析を行った結果、メチル化差異を示す可変部位を多数検出した。さらに雄牛の月齢に伴って変化するメチル化可変部位も多数検出した。これらメチル化可変部位のメチル化度を評価するため、COBRA法を基盤とした簡便な検出系を探索したところ、種雄牛35頭の凍結精液60ロット以上を用いた解析により、加齢変化に関連するメチル化可変領域を9箇所、受胎性に関連する指標となる可能性のあるメチル化可変領域を2箇所特定した。さらに、体外受精後の胚盤胞期胚のメチル化度を1個1個調べたところ、脱メチル化の状態は部位によって様々であり、これらを精査することによりメチル化度が胚の正常性評価の指標となりうる可能性も考えられた。以上の結果から、ヒト用メチル化解析マイクロアレイによるウシ精子DNAメチル化状態の比較解析が有効であること、またCOBRA法を用いれば多数の凍結精液サンプルの受胎性評価だけでなく、微量サンプルである体外受精胚をも評価できると期待される。
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Journal of Reproduction and Development
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https://doi.org/10.1262/jrd.2018-146