研究課題/領域番号 |
16K08003
|
研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
浦島 匡 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (80185082)
|
研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
|
キーワード | オリゴ糖ヌクレオチド / 乳 / 初乳 / 反芻家畜 / ミルクオリゴ糖 / シアル酸 / 腸管機能 |
研究実績の概要 |
糖ヌクレオチドは通常細胞内に単糖ヌクレオチドとして存在し、ゴルジ体において糖転移酵素のドナーとして糖鎖合成材料として使用される。一方で、若干の哺乳動物種の乳また初乳には機能の解明されていないオリゴ糖ヌクレオチドが発見されている。研究課題の中では最終的にはオリゴ糖ヌクレオチドの機能の解明を目的としながら、まずオリゴ糖ヌクレオチドが広範囲の種の乳に含まれるかの探索を試みた。平成28年度には反芻家畜をターゲットとして、オリゴ糖ヌクレオチドの探索のため、ヒツジ初乳とヤギ初乳、レイヨウのアダックス種の初乳、ならびにラクダ乳の分析を行った。ヒツジ初乳からはオリゴ糖ヌクレオチドとして2種のシアル酸を含む分子種(Neu5Gc(α2-6)Gal(β1-4)GlcNAcα1-UDPならびにNeu5Gc(α2-3)Gal(β1-4)GlcNAcα1-UDP)が、アダックスの初乳からはNeu5Gc(α2-6)Gal(β1-4)GlcNAcα1-UDPが分離され、構造決定された。これまでにオリゴ糖ヌクレオチドは人乳、トナカイ乳、ブタ初乳から発見されているが、シアル酸を含む分子種の発見ははじめてである。ヤギの初乳からはGal(β1-4)GlcNAcα1-UDPが発見されたものの、その量は極めて少なく、シアル酸を含む分子種は発見されなかった。ラクダ乳からはいずれのオリゴ糖ヌクレオチドも発見できなかった。この結果も基づき、オリゴ糖ヌクレオチドは哺乳動物のあらゆる種の乳または初乳に普遍的に存在するのではなくて一部の種に限られること、またオリゴ糖ヌクレオチドの分子種も哺乳類の種によって異なることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画にある反芻動物種の乳また初乳試料採集を行い、複数の動物種(ヒツジ、アダックス)の初乳の中に新規のシアル酸を含むオリゴ糖ヌクレオチドを発見した。これはオリゴ糖ヌクレオチドが生体成分として種にまたがって存在することを示しており、機能性の存在を予想される点において極めて価値の高い学術成果である。また新規化合物を記載した点において、糖質科学の観点からも重要な成果である。一方で、あらゆる反芻家畜の種の乳にではなく特定の種の乳また初乳に含まれることも示され、種固有の生理的な特徴と進化の観点からも興味がもたれる。新規な成果を生みだしたことから、平成28年度もおおむね順調に進展したということができる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度において、ターゲットとする他の反芻動物として水牛(インドネシア産)、ウシ、レイヨウのバーラル種とツタシンガ種、キリンの乳または初乳の採集に成功している。さらにエゾシカの乳の採集計画を立てている。平成29年度は28年度に引き続き、それらの反芻獣の乳/初乳からオリゴ糖ヌクレオチドの分離を行い、構造決定を行う。また採集が比較的容易なヒツジ初乳からシアル産を含むオリゴ糖ヌクレオチドの大量調製を行い、HT-29細胞やCaco-2細胞などの腸管細胞の培養系への添加と炎症性サイトカインの分泌調節やアポトーシスなどの機能をターゲットとしたアッセイ系の開発を試みる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
交付内定が遅かったので、年度末までの計画的な使用ができなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
繰り越されたものについては、平成29年度に物品費として使用する計画である。
|