研究実績の概要 |
2018年度はウシ、ヤギの初乳を材料として、オリゴ糖ヌクレオチドの大量調製方法の開発と分離された成分の構造解析を行った。それらより分離された糖質画分をDEAE Sephadex A-50樹脂とギ酸アンモニウム緩衝液による濃度勾配溶出イオン交換クロマトグラフィーによって分画し、脱塩後、順相系HPLCによって各成分の分離・精製を行った。使用したイオン交換クロマトグラフィー条件で、乳に含まれる糖ヌクレオチドと糖-1-リン酸をミルクオリゴ糖と選択的に分離することができた。分離された成分をNMRによる構造解析に供した結果、ウシ初乳からはGlcNAc-1-リン酸, GalNAc-1-リン酸, UDP-Gal, UDP-Glcが、ヤギ初乳からはGlcNAc-1-リン酸, GalNAc-1-リン酸, UDP-Gal, UDP-Glc, UDP-GlcNAc, UDP-GalNAcが発見されたが、いずれからもオリゴ糖ヌクレオチドは分離されなかった。上皮細胞は、生育培地に上皮成長因子(EGF)の添加しない場合には分化が遅くなることが知られている。本実験では集密の細胞密度に達したヒト未成熟上皮HIEC細胞に、糖ヌクレオチド(UDP-GlcNAc, UDP-GalNAc)及び糖-1-リン酸(GlcNAc-1-P, Gal-1-P)を0.5 μg/ml ~ 100 μg/mlの濃度で添加し、37℃CO2条件下で培養した。細胞の増殖と分化を顕微鏡観察によって調査した結果、使用した糖ヌクレオチドまた糖-1-リン酸の添加によって細胞の分化促進が観察され、EGFに近い働きを持つことが明らかになった。これらの成分によるこのような働きが発見されたのははじめてであり、初乳に含まれる糖ヌクレオチドや糖-1-リン酸に新生児の腸の成長を成熟するような働きのあることが示唆された。
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