研究課題/領域番号 |
16K08004
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
竹原 一明 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40171665)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 汚染指標病原体 / バイオセキュリティ / RT-PCR / 消毒資材 |
研究実績の概要 |
畜産農場では、ワクチンで予防できない多くの家畜感染症に対しては、防疫対策(バイオセキュリティ)の強化が唯一の予防手段となるが、まだ防疫対策に関する科学的評価系はできていない。本研究では、農場の「汚染指標病原体」となり得るウイルス性病原体を特定し、その病原体の迅速で容易な検出系を確立する。次いで、農場内の汚染指標病原体の分布・動態を基に、防疫対策に客観的な科学評価を加えることにより、畜産農場の生産物の安全性と生産性の向上を図る。 平成28年度は、病原体の疫学的動態を調べた。46戸の酪農・肉牛農場において、下痢を呈した88頭の糞便を検体として採取し、ウシA 群ロタウイルス(GAR)、ウシトロウイルス(BToV)、ウシエンテロウイルス(BEV)、ウシコロナウイルス(BCV)を同時に検出できるOne-step multiplex RT-PCRにかけた。その結果、GAR>BEV>BCV=BToVの順に検出された。次に、A農場で子牛20頭を個体識別し10週間糞便を採取したところ、BEV>BCV>GAR>BToVの順で、B農場で子牛10頭を個体識別し5週間調べたところ、GAR=BCV>BEV=BToVの順でそれぞれ検出された。A農場では、同じ個体が連続して陽性を示す例がBEVとBCVで観察された。GARとBToVの検出は一過性だった。全検体において、週齢別では、3週齢未満でGARが多く検出され、BCVおよびBEVは、ほとんどが3週齢以上だった。 以上の結果から、BEV、BCVおよびGARは下痢を呈していない個体からも検出されたことから、農場の汚染指標病原体になると考えられた。なお、A農場については、具体的なバイオセキュリティ対策、特に消毒資材の種類や利用方法について、情報を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多数の農場から検体を得、ウイルスを検出したとともに、2農場について、継時的に検体を採取し、ウイルスの動態を調べることができ、農場汚染指標病原体候補を特定できた。特に3週齢未満ではGARを、3週齢以上ではBEVおよびBCVを標的にすることで、農場の衛生状況を把握できると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
より迅速にこれらの指標病原体を検出するために、ウイルス個別にリアルタイムRT-PCR検出を試みる。さらに、陽性検体からウイルスの分離を試み、バイオセキュリティ強化資材に対する感受性を調べる。また、農場側に具体的なバイオセキュリティ対策、特に消毒材の利用方法等について、情報を得る。さらに、分離病原体に対する効果的なバイオセキュリティ手法を検討し、農場側に情報を提供後、さらに追跡調査し、病原体の動態を把握する。
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