研究課題
畜産農場では、ワクチンで予防できない多くの家畜感染症に対しては、衛生対策の強化が唯一の予防手段となるが、まだ衛生対策に関する科学的評価系はできていない。本研究では、農場の「汚染指標病原体」となり得るウイルス性病原体を特定し、その病原体の迅速で容易な検出系を確立する。次いで、農場内の汚染指標病原体の分布・動態を基に、衛生対策に客観的な科学評価を加えることにより、畜産農場の生産物の安全性と生産性の向上を図る。平成30年度は、平成28年度から調査をした農場のうち、比較的飼養頭数が多いA農場において、2か月ごとに3週齢未満、3週齢以上の子牛各40頭について、計480頭x2年間=960頭分の糞便を採取し、ウシA 群ロタウイルス(GAR)、ウシトロウイルス(BToV)、ウシエンテロウイルス(BEV)、ウシコロナウイルス(BCV)を同時に検出できるOne step multiplex RT-PCRにかけ、病原体の疫学的動態を調べた。なお、A農場では、2017年9月末に農場の衛生対策として、1)子牛の牛舎に入る際に長靴交換を実施し、2)牛舎の中で使用した長靴を踏込消毒槽に長期間浸漬するという、バイオセキュリティ強化を実施した。検体検出を衛生対策前と対策ごとで比較すると共に、牛の状態を農場から聞き取り調査した。衛生対策強化により、農場側からは、1)死亡個体数が衛生対策強化前の1割に減少し、2)下痢関連の治療個体数が減少し、3)下痢の治療をしたとしても治療期間が短縮したとの情報を得た。実際、3週齢以下の個体では、GAR、BToV、BEVとBCVのいずれのウイルス検出率も有意に減少した。3週齢を超える個体においても、GAR、BToVとBEVは検出率が有意に減少した。
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