研究課題/領域番号 |
16K08005
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
西海 理之 新潟大学, 自然科学系, 教授 (60228153)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | デコリン / 高圧処理 / プロテオグリカン / 立体構造 / 静水圧 / 筋肉内結合組織 / 食肉科学 |
研究実績の概要 |
我々は、これまでの研究から、高圧処理による筋肉内コラーゲン線維/結合組織の脆弱化には、コラーゲン線維を接着している筋肉内デコリンのコラーゲンからの解離が関与することを予想し、まずは、高圧処理に伴うデコリン分子構造の変化を詳細に検討することを目的とした。以上の目的から、平成28年度では以下の実験を実施した。 科研費基盤C(H24~H26年度)研究で確立した手法(Hosonoら,2014)を用い、年間を通じて常時ウシ筋肉内デコリンを抽出・単離・精製した。各種電位泳動を用い、精製したデコリンは1本のデルマタン硫酸鎖(約50 kDa)と約50 kDaのコアタンパク質を有するスモールプロテオグリカンであることを確認した。精製デコリンに対してコンドロイチナーゼABC処理を行った後にイオン交換クロマトを行い、筋肉内デコリンコアタンパク質を調製した。 トリプトファン残基(295 nm)およびチロシン残基(280 nm)を内部プローブとして測定した 700 MPa高圧処理を行った筋肉内デコリンコアタンパク質の蛍光スペクトルはわずかに低下し、高圧処理に伴ってデコリン分子の3次構造が不可逆的に変化した。また、高圧下・同条件での蛍光スペクトル解析ならびにANSを用いた実験により、400 MPaまでの高圧力下でデコリン分子の3次構造が不可逆的に変化すること、特にコラーゲン分子と相互作用する領域と予測されるデコリンコアタンパク質末端領域における構造変化が大きく、高圧処理に伴う筋肉内コラーゲン線維構造の脆弱化との関連性が推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
筋肉内デコリンの単離・精製については、収量も精製度も高く、極めて順調に進展した。一方で、平成28年度に、DSCを用いたデコリン分子の熱力学的挙動ならびにCDを用いたデコリン分子の2次構造解析を行う予定であったが、DSC装置の最適化が不調であり、したがって、平成29/30年度に行うべき実験の一部(高圧処理に伴うおよび高圧下でのデコリン立体構造の解析実験を平成28年度に行い、全体としては(辻褄が合った状態で)順調に推移した。なお、平成28年度に予定していた実験に関しては、平成29年度に行うべく、現在、DSC解析条件の最適化を行っているところである。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、 (1) DSC分析やCD解析を行うためには大量の精製デコリンが必要なため、引き続き、年間を通じて常時ウシ筋肉内デコリンを抽出・単離・精製する。 (2) DSC分析/解析条件の最適化を行った上で、高圧処理したデコリンの熱変性挙動を明らかにし、高圧処理に伴うデコリン分子構造の変性状態や安定性を解析する。 (3) 高圧下ならびに高圧処理後のデコリンコアタンパク質のCD解析を行い、デコリン分子2次構造の変化およびその可逆性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
試料用牛肉の購入費用が予定より少なくなったものの、海外出張旅費のやや増加とその他経費としての実験室スペース使用料などの経費がかかり、トータルとしては、ほぼ予定通りの執行となった(1.3万円程度の次年度使用額が生じた程度である)。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度としては、平成28年度からの繰越(13,302円)を含めて直接経費1,213,302円を、物品費750,000円、旅費100,000円、人件費・謝金150,000円、その他213,302円として使用する計画とする。(他に、間接経費は360,000円。)
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