研究課題
我々はこれまで、皮膚保護作用で知られるダチョウ油を作用させたヒト皮膚角化細胞に対して網羅的遺伝子解析を行い、Toll様受容体 (TLR) 10の発現誘導作用を見出したほか、発現誘導に関わる分子としてトリグリセリドやその構成脂肪酸を遊離型で作用させることで誘導作用が増強されることを明らかにした。本研究は遊離脂肪酸の皮膚角化細胞におけるTLR2誘導性の炎症応答に対する抑制作用について評価を行った。ヒト皮膚角化細胞HEKaの培養系にTLR10発現増強作用のみられたトリグリセリドならびに脂肪酸を添加し24時間の培養を行った。その後市販TLR2リガンドであるPam2CSK4、Pam3CSK4、FSL-1により炎症応答の誘導を行った。抗炎症作用の評価は、TLR2リガンド添加46時間後の培養上清中に産生されたIL-8をサンドイッチELISA法で測定することにより行った。トリグリセリドでは脂肪酸の種類にかかわらずTLR2リガンド誘導性のIL-8産生を抑制する作用はみられなかった。遊離脂肪酸では3種のリガンド対しても抑制作用が観察されたが、とくにTLR1/TLR2リガンドであるPam3CSK4誘導性の炎症に対して効果が認められ、作用の強さでは一価不飽和脂肪酸であるパルミトレイン酸でもっとも顕著であった。以上のことから遊離型となった脂肪酸の一部がダチョウ油の抗炎症に大きく寄与している可能性が示唆された。また、TLR10誘導に関与する受容体としてPPAR、GPRを対象に受容体アゴニストやアンタゴニストを用いた試験の結果、単独の分子が誘導を担っているのではなく、複数の分子が関与した結果TLR10が誘導されていることを示唆する結果が得られた。
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Microbes and Environments
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