研究実績の概要 |
筋内脂肪が多く霜降り肉として知られている黒毛和種牛肉の呈味要因を、牛肉中の遊離脂肪酸との関連性から明らかにすることを本研究の目的としている。本年度は牛肉肉汁中の遊離脂肪酸が舌上の味蕾に存在する味細胞を刺激し牛肉の呈味性に影響する可能性を、リアルタイムCa2+イメージング法で直接的に検証することを目的とした。 先ず熟成初期(と畜後7日目)の黒毛和種およびホルスタイン種牛肉から肉汁試料を調製した。 パルミチン酸、ステアリン酸、およびオレイン酸をそれぞれ単独に、または混合して添加し、肉汁試料の呈味性変化を味覚センサ分析および官能評価法で調べた。その結果、筋内遊離脂肪酸量の少ないホルスタイン種牛肉肉汁で「甘味」値が増強されることが両方法で、また「こくみ」値が強まることが官能評価法で示され、脂肪酸の添加が肉汁の味の特性に影響することが示唆された。 肉汁の味特性に対する遊離脂肪酸の直接的な影響を検証するために、モデル動物であるマウスの舌におけるCa2+応答解析に用いる味細胞の確認と単離を行った。マウスの舌を切除し、有郭乳頭を含む上皮を実態顕微鏡下で剥離(Albrecht et al., Cell Tissue Res, 1984)し、PBS中に4℃で保存した。抗ガストデューシン抗体を用いて切除した舌のパラフィン切片を材料に免疫組織染色を行い、有郭乳頭中の味細胞を確認した。また抗PLCβ2抗体による凍結切片の蛍光免疫染色法で同様に味細胞を確認した。さらに調製した有郭乳頭の一部からTotal RNAを抽出し、RT-PCR法でガストデューシンおよび味覚受容体の各mRNAの味蕾における発現を確認した。続いてCa2+イメージング法に用いる味細胞の単離を試み、1個の有郭乳頭から数個の味細胞を得ることに成功している。引続き単離味細胞の数を増やし、脂肪酸添加による味細胞の応答実験に進める計画である。
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