研究実績の概要 |
1.有機的管理草地の養分フロー:1)マメ科牧草による窒素固定量の評価:クローバ引き抜き法により、窒素固定量とマメ科率の関係を明らかにした。この関係を用い、窒素固定量を評価した結果、平均8.6t(38kg/ha)の窒素を固定していた。2)牧草生産に伴う養分フロー解析:牧草収量と牧草の窒素含有量から、牧草生育に用いられる窒素は14.3tであった。3)草地土壌の窒素ストック:土壌分析により0-30cm、220haの土壌に1952tの窒素がプールされていた。4)堆肥散布による窒素フロー:15.7tの窒素がリサイクルされ、この間に3.1tの窒素がアンモニアとして揮散した。 2.系外に持ち出される窒素フロー:牛肉出荷に伴う窒素フローは年間1.4tであった。 3.自然沈着による投入窒素フロー:乾性沈着と湿性沈着の合計量が2.8tであった。 4.牧場全体の窒素収支:牧場全体として年間39kg/haの余剰窒素を発生した。土壌の持つポテンシャルとして各種養分量を測定した。牛肉出荷に伴うアウトフローはN:1.4t、P:0.36t、K:0.09t、Ca:0.64t、Mg:0.02tであり、土壌ストックはP21t、Ca300t、Mg52t,K 31tであった。現在のストックで養える年数はP:57年、Ca:469年、Mg:2600年、K:341年と見積もれた。 5.有機的管理牧場のLCA解析:八雲牧場の去勢雄牛生産に係る環境影響は、有機的管理導入前、導入後ともに、酸性化、富栄養化への影響およびエネルギー消費において、慣行システムの値を下回る。気候変動への影響において、有機的管理導入後の値は慣行と同等であるものの、有機的管理導入前の値は慣行を上回る。有機的管理導入によりエネルギー消費が大幅に削減されており、これには化学肥料の施用中止が寄与している。
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