研究課題/領域番号 |
16K08012
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
萩 達朗 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門 畜産物研究領域, 主任研究員 (00510257)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | カロテノイド / 乳酸菌 / 抗酸化物質 / 発現制御 |
研究実績の概要 |
乳酸菌が生産する抗酸化物質は、乳酸菌自身の酸化ストレス耐性向上や、動物では酸化ストレスで生じる大腸炎予防に繋がることが報告されており、乳酸菌の新たな抗酸化物質の発見が重要視されている。このような背景のもと、カロテノイド生産乳酸菌には特有の酸化ストレス応答機構が存在することが明らかとなってきたことから、本研究では、カロテノイド生産乳酸菌について、カロテノイド生産関連遺伝子および機能未知遺伝子をターゲットとして、新規抗酸化物質の探索を行う。今年度は、①Lactobacillus属の酸化ストレス応答遺伝子をトランスクリプトーム解析で明らかにして機能未知遺伝子を抽出するとともに、②Enterococcus属の持つ機能未知遺伝子の抗酸化作用について検討した。 ①Lactobacillus plantarumを用いて、カロテノイド生合成遺伝子の発現量変化を定量PCRで確認した結果、好気培養におけるLb. plantarumのカロテノイド生合成遺伝子は、嫌気培養と比較して最大2倍程度発現量が増加し、経時的に変化することが明らかとなった。次に、カロテノイド生合成遺伝子の発現量が最も増加した培養時間においてRNAを回収し、トランスクリプトーム解析で網羅的な遺伝子発現解析を行った。その結果、嫌気培養に比べて3倍以上発現量が増加した機能未知遺伝子が4個確認できた。 ②Enterococcus gilvusについて、過去の成果で得られたトランスクリプトーム解析結果をもとに、好気培養で発現量が増加する機能未知遺伝子を選択し、シャトルベクターに連結して乳酸菌Lactococcus lactisに導入し、異種発現株を7株作製した。次に、7株を過酸化水素を含む培地に接種して生育を調べた結果、1株は過酸化水素に対する耐性が向上する傾向にあり、乳酸菌の新規抗酸化物質の存在が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Lb. plantarumから、好気培養で誘導された新規抗酸化物質をコードすると予想される候補遺伝子を得た。また、E. gilvusから得た機能未知遺伝子を異種発現させることで、酸化ストレス耐性が向上する株を得た。一方、酸化ストレス耐性が大きく向上した株が得られず、発現株自体の抗酸化能については未確認であることから、今後、さらなる発現候補遺伝子を選択し、発現株自体の抗酸化能を検討する必要がある。その点を考慮し、「研究はやや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
Lb. plantarumおよびE. gilvusから得た機能未知遺伝子を乳酸菌で異種発現させ、発現株の酸化ストレス耐性を調べる。さらに、発現株自体の抗酸化能について、菌体破砕物あるいは培養上清の抗酸化活性を、OxiSelect ORAC & HORAC 活性測定アッセイ(OxiSelect)等の抗酸化能測定キットを用いて測定する。 また、候補となる機能未知遺伝子が少ないため、予定通り抗酸化活性の高い発現株を得られない可能性もある。その場合は、E.gilvusおよびLb. plantarum以外の乳酸菌のゲノム情報を用いて、カロテノイド生産乳酸菌特有の機能未知遺伝子を選択し、発現株を作製する。
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次年度使用額が生じた理由 |
異種発現候補となる機能未知遺伝子が少なく、発現株作製の経費が縮小、また、発現株の抗酸化活性を次年度に移行したため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
異種発現株の抗酸化活性の測定および、新たな発現株の作製のために使用する。
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