研究実績の概要 |
鶏コクシジウム症はEimeria 属原虫の感染によって起こり、下痢を主徴とする。感染鶏は重篤例では血便を呈し死亡するため、生産現場における影響は極めて大きい。本原虫の野外株(強毒株)を雛に経口投与し、糞中に早期に出現するオーシストを選択的に回収し、これを数十代継代することで弱毒化することが知られている。この方法に準じてEimeria tenella 強毒株を雛で20代継代した。その結果、強毒株で致死量の2倍に相当する原虫を投与しても宿主は病態を発現せず、本株の弱毒化に成功したことを確認した。継代により弱毒化された株について、病理組織学的解析を行ったところ、病態発現ステージとなる第2代無性生殖期のシゾントが早期に出現し、かつシゾント長は約1/2と縮小していた。また、0、5、10、15および20代継代後のオーシストを回収し、ゲノムDNA を抽出後、Illumina HiSeq により塩基配列を決定し、1.3億リード(約13,000Mbp)~0.4億リード(約4,000Mbp)を得ることができた。公開されているE. tenella の全ゲノム情報をリファレンス配列とし、5株のリード配列をマッピングした。その結果、リファレンス株と比較して、1塩基置換等の変異が認められた箇所は計112,271個であった。さらに各継代株についてマッピングされたリード数からVariant Allele Frequency (VAF)を算出し、0代から20代にかけてVAFが20%以上変動している箇所を決定した。塩基配列に変異のあった遺伝子領域についてアノテーション付けを行い、アミノ酸レベルでも変異のある領域を抽出した。これら変異のある遺伝素が、弱度化に関わる責任遺伝子である可能性が示唆された。
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