研究課題/領域番号 |
16K08026
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
向本 雅郁 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (80231629)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ウエルシュ菌 / NetB / 鶏壊死性腸炎 / 孔形成毒素 |
研究実績の概要 |
昨年度実施した二次元電気泳動およびLC-MSによるNetBの細胞致死活性に影響する感受性細胞側分子の特定においてLC-MSデータベース上に該当する分子が存在しなかった。この理由として、LC-MSデータベース上に鳥類とりわけニワトリに関するデータが非常に少ないことが考えられる。LMH細胞をマウスに免疫して得られた抗体がNetBの細胞致死活性を阻害することから、抗体中にはNetB受容体あるいはNetBの細胞致死作用を阻害する細胞側分子を認識する抗体が含まれていることを示している。そこで、今年度はLMC細胞あるいはLMH細胞膜をマウスに免疫することにより、NetBの細胞致死活性を阻害するモノクローナル抗体を作製し、その抗体を用いて特定分子を単離することを試みた。LMH細胞単体またはLMH細胞膜を免疫原としてマウスに5~6回免疫後、脾臓細胞から抽出したリンパ球を用いて常法によりハイブリドーマを作製した。スクリーニングはLMH細胞膜を固相化したELISA法および単層培養したLMH細胞にハイブリドーマ培養上清を反応後、NetBを添加し、致死活性をMTT法により測定した。LMH細胞膜と反応し、さらにNetBの細胞致死活性が減少したクローンを選別した。3回限界希釈法によるクローニングが終了した6クローンについてウエスタンブロッティングにより細胞膜上の反応分子を調べた結果、1クローンについて特異的分子を検出することができた。さらに、現在、陽性ハイブリドーマを作製している。 細胞膜上のセラミドはスフィンゴミエリナーゼの代謝更新によって細胞膜上に蓄積する脂質である。スフィンゴミエリナーゼの作用を阻害する阻害剤であるGW4869を用いてセラミドのNetB細胞致死活性への関与について解析した。その結果、阻害剤添加によりNetBの細胞致死活性の減少が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
NetBの細胞致死活性を抑制するモノクローナル抗体を得るために3回細胞融合を実施し、3回目にようやく陽性クローンを得ることができた。分子の特定については現在、ウエスタンブロッティングによりバンドの検出が可能なモノクローナル抗体は1クローンに限られている。ウエスタンブロッティングにより特異分子と反応する複数のモノクローナル抗体を得なければ目的の分子特定には至らないと考えている。したがって、さらに陽性クローンを得る必要がある。 オリゴマー形成から細胞致死に関わる細胞側分子の役割については、LMH細胞膜上のセラミドがNetBの細胞致死作用に関与していることを証明したが、どのように関与しているのかを証明するまでに至らなかった。オリゴマー形成あるいは孔形成のいずれの段階にセラミドが関与しているのかを解析する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
NetBの細胞致死活性に影響する感受性細胞側分子の特定に関しては、致死活性を抑制するモノクローナル抗体の数を増やすと共に、それらの抗体を用いてブロッティングや免疫沈降により分子を単離する。エンドペプチダーゼで処理後、ペプチドシーケンスにより複数箇所の5’末端アミノ酸配列を解読する。アミノ酸配列から想定されるDNAプライマーを作製し、LMH細胞を用いたRT-PCRにより特定分子のcDNAを単離する。塩基配列を解読後、ニワトリゲノム配列より全長を明らかにすると共にゲノムデータベースを用いたアノテーションにより関与する分子を特定する。遺伝子組換えにより非感受性細胞膜上に当該分子を発現させ、NetBへの感受性獲得の有無を解析する。 ウエルシュ菌が産生する別の毒素(α毒素)はスフィンゴミエリナーゼ活性を有することから、LMH細胞をα毒素で前処理した時のNetBの細胞致死活性へのα毒素との相乗効果について調べることにより、NetBの病原性発現機構の一端を解明する。
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