昨年度から引き続き、ウエルシュ菌による鶏クロストリジウム・パーフリンゲンス感染症(鶏壊死性腸炎)の病原因子であるNetBの細胞致死活性に影響する感受性細胞側分子の特定を行った。NetBは鶏由来細胞にのみ毒性を発揮するため、NetB感受性細胞である鶏肝癌由来細胞(LMH)の細胞膜分子に対するモノクローナル抗体の作製およびLC-MS解析することにより、NetBの毒性発現に関わる感受性細胞側分子の特定を試みた。LMH細胞膜を免疫したマウス脾臓細胞を用いて常法によりハイブリドーマを作製した。NetBの細胞致死活性を抑制するモノクローナル抗体2株を得た。これらモノクローナル抗体とLMH細胞膜をウエスタンブロッティングにより反応させたところいずれも90 kDa付近に特異的なバンドが検出された。そこで、この分子をNetB細胞致死活性に関連する分子と判断し、外部機関のLC-MS/MSデータベースにより解析を行った。解析の結果、上位にヒットした分子より細胞膜上に存在すると考えられる分子を選別した。選別した分子は、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質大サブユニットおよびニワトリトランスフェリン受容体タンパク質の2分子であった。選択した2分子が鳥類細胞に特異的に発現する分子であるかを調べるため、ホモロジー検索により鳥類と哺乳動物間におけるアミノ酸配列の比較を行った。その結果、トランスフェリン受容体タンパク質において、鳥類と各種哺乳類間での相同性がより低い結果となった、トランスフェリン受容体は小腸で発現しており、NetBが病原性を発現する臓器であることから、鶏トランスフェリン受容体はNetBの細胞致死活性に関わる分子である可能性が示唆された。
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