研究実績の概要 |
これまで、ウシMHC(BoLA)領域と疾患感受性の個体差の相関性を解析するために、BoLA全体、約6M塩基対をターゲットにしてプローブを設定し、ターゲットリシークエンスを行ってきた。一方、BoLA領域は非常に多型に富み、重複遺伝子も多く存在する事から、リード長の長いMiseqによるシークエンスを行うが、十分なシークエンス深度を得るためには、コストが莫大になってしまうという欠点があった。そこで、本年度は、多検体のシークエンスを行うために、シークエンス領域をよりコンパクトにすることを目的として、牛白血病ウイルス(BLV)感染前およびBLV感染後のMHC領域内の遺伝子発現をRNA-seqによって解析する事で、各遺伝子の発現の有無の調査を行った。PCR-Sequence Based Typing法を用いてウシ主要組織適合遺伝子複合体(BoLA)-DRB3、BoLA-DQA1を、SNP1およびSNP2をタイピングし、牛白血病プロウイルス量を増加させるアレルであるBoLA-DRB3*1601:DQA1*12011:SNP1*A、SNP2*Aをホモで有する黒毛和種5頭について、BLV感染牛由来白血球を静脈内注射して感染させ、そのプロウイルス量の増加をCoCoMo-qPCR法で測定し、全ウシ遺伝子のmRNAの発現を次世代シークエンサーを用いて解析した。 抗原提示に関与するMHC遺伝子の中で、発現が強くみられたものは、BoLA-A、JSP.1、DQB, DRB3, DQA5, DQA2, DRA, NC1, DMA, DMB, TAP1などであった。一方、BoLA-DYA, DYB, DSBといった、反芻動物特異的なMHC遺伝子や発現が弱いとされているDRB2の発現は非常に弱かった。驚いたことにBoLA-DQA1遺伝子の発現は殆ど見られず、この感受性ハプロタイプの特徴である可能性が考えられた。
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