研究実績の概要 |
狂犬病は、狂犬病ウイルス(Rabies virus: RABV)を原因とする人獣共通感染症である。ひとたび発症すると確実な治療法はなく、致死率はほぼ100%である。本研究は、RABVに対する人工小型抗体(single chain variable fragment: scFv)をRABV感染細胞に導入して、RABVの増殖を阻害することにより、狂犬病の治療法への応用を目指す。本課題では、血中投与より低い侵襲性で効果が期待されている経鼻接種により、scFv遺伝子を封入したナノ粒子を脳実質へ送達することを前提に、ナノ粒子の開発を進めている。 今年度は、in vitroにおけるウイルス増殖阻害効果を確認済みの抗RABV-P蛋白質scFvクローン(scFv-P19)の他に、同様の増殖阻害効果を有するクローンを探索する目的で、抗RABV-P蛋白質scFv(scFv-P19, 38, P80, P115)遺伝子および陰性対照として抗コウモリIgG-scFv(scFv-bat-IgG)遺伝子について、マウスを対象としたコドン最適化を行ったうえで、pIRES2-AcGFP1-Nucにクローニングした。作製した各プラスミドDNA(pDNA)をマウス由来MNA細胞に導入し、GFP発現細胞のみをFACSでソートし、scFv発現細胞のみを用いてウイルス増殖阻害効果を測定できる系を構築した。 また、経鼻接種によるデリバリー効率を最大限に高めるため、高濃度核酸の封入が可能で、粒子径が300nm以下となる新組成のリポソームを開発した。高濃度のscFv発現pDNAおよびmRNAを封入したナノ粒子を複数回マウスに経鼻接種した。新型コロナウイルス流行のため、動物実験の開始が大幅に遅れたことにより、scFv発現状況の解析は現在も継続中である。
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