研究課題
デジタルPCR法を用いたBRAF遺伝子変異検査による移行上皮癌(TCC)の診断精度については前年度から継続して行い、本検査法単独および細胞診の併用による感度、特異度、正診率ともに前年度と同様に非常に高く、BRAF遺伝子変異陽性TCCの非侵襲的で高感度な検出法として確立されたと考えられた。尿サンプルのショットガン解析からはerbB-2などの変化を見出し、またTCCの病態進行の指標となる候補として上皮間葉転換を標的としてさらなる検討を進めた。TCC症例および非TCC症例や健常組織におけるEMTマーカー(上皮系:E-cadherin、ZO-1、間葉系:vimentin、N-cadherin、fibronectin)の発現検索では、vimentinがTCC症例においてより高い発現率を示しており、高発現を示す症例群では有意に生存期間が短いことが明らかとなった。これらの結果からvimentinはTCCの病態進行を反映するマーカーとして有用であることが示唆された。またBRAF遺伝子変異保有症例においてvimentinの発現スコアが高い傾向も見られたため、細胞株でのさらなる検討を進めた。EMT様の形質を示すBRAF遺伝子変異陽性株2株に対し、BRAFおよびPan-RAF阻害剤添加によるEMTへの影響や下流シグナル変動を評価したところ、両阻害剤ともにERK経路の阻害、間葉様から上皮様への細胞形態変化、EMTマーカーの上皮様変動がみられ、Pan-RAF阻害剤では移動・浸潤能にも変化が見られ、BRAF遺伝子変異とERK経路からEMTが誘導されている可能性が示唆された。本研究でのこれらの成果からBRAF遺伝子変異の検出法の確立とvimentinが病態指標としてこれをさらに補強する可能性が示され尿サンプルにより腫瘍の診断と病態把握を行うLiquid-biopsyの基盤データが形成されたものと考えた。
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