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2016 年度 実施状況報告書

バクテリオファージを活用した鶏大腸菌症の制御法の構築

研究課題

研究課題/領域番号 16K08050
研究機関鳥取大学

研究代表者

村瀬 敏之  鳥取大学, 農学部, 教授 (20229983)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードバクテリオファージ / 鶏 / 大腸菌症
研究実績の概要

鶏大腸菌症の制御法として、細菌に感染したのちにそれを破壊(溶菌)するバクテリオファージ(以下、ファージ)の活用が期待される。平成28年度は、環境材料からのファージ分離法を検討するとともに鶏大腸菌症の原因菌(avian pathogenic Escherichia coli, APEC)に感染するファージを分離し、その宿主域及び溶菌性の確認並びに遺伝学的解析を実施した。
下水処理場(8カ所)から水サンプルを採取し、6株のAPECと混合して培養した後にフィルター濾過した各サンプルについて、各APEC株に対する溶菌を調べた。その結果、室温で処理したサンプルすべてが溶菌を起こし、そのうち6サンプルは3株以上のAPECで溶菌をみとめた。37℃で処理した場合は5サンプルで最大2株のAPECに溶菌を起こした。したがって、サンプル処理の温度がファージの分離に影響することが示唆された。さらにファージサンプルを混合して40株のAPECに対する溶菌を検討したところ、混合により溶菌するAPEC株の数が増した。ファージを純化した場合、溶菌するAPEC株の数は減少した。以上の成績から、純化後のファージを大腸菌症の制御に活用する場合は、溶菌するAPEC株を調査した上で混合する必要があることが示唆された。
一方、4農場のブロイラー鶏舎内の異なる20カ所の飲用水から、上記に準じてAPECを溶菌するファージを分離・純化し、得られた4株のビルレントファージの性状解析を実施した。40株のAPECに対する溶菌を調べたところ、分離及び純化に用いた宿主菌のAPEC株を含め、3~6株のAPECを溶菌した。電子顕微鏡観察によるファージ粒子の形態学的特徴から、3株はMyoviridae、残る1株はPodoviridaeに属するファージであると考えられた。加えてパルスフィールドゲル電気泳動により、前者3株はいずれもゲノムサイズが264kb、Podoviridaeの1株は56kbと推定された。さらに、すべての株の全塩基配列を解析中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ファージ分離用の環境サンプルの入手に際し、関係者の協力が得られた。下水処理場に対しては、本研究の意義を説明した上、本研究の遂行に必要なサンプルの供与を得ることができた。鶏の飼養農場は、以前に大腸菌症発症鶏からAPECの分離を実施した経緯があり、本研究の遂行に必要なサンプルの供与を得ることができた。
ファージの分離は、ウイルス学実験に精通する連携研究者の助言に基づき実施した。その結果、解析に必要な多くのファージ株を分離することができた。また、宿主となるAPECに明瞭な溶菌班を示すファージが当初の予想よりも数多く分離されたため、純化後のファージを大腸菌症の制御に活用するにあたり考慮すべき基本的な情報を得ることができた。また、電子顕微鏡観察及びゲノムサイズの推定に十分な時間を充てることができた。全塩基配列の決定に必要な次世代シークエンサーによる生データの収集はすべて完了している。
以上の理由から、本研究はおおむね順調に進展しているものと判断した。

今後の研究の推進方策

平成29年度以降は、ファージの存在が鶏の飼養環境中におけるAPECの動態に与える影響について検討を行うことが当初の計画である。また、APEC感染鶏を用いた実験も実施する計画である。ただし、その予備的なデータを収集する必要があるため、当初の研究計画の遂行前に、鶏舎環境を模した条件下に存在するAPECが、ファージによりその数を減ずるかどうかの検討を、まず実施する。すなわち、APECの菌液を滴下した濾紙を滅菌シャーレ内に設置し、そこに平成28年度に分離されたファージを散布した場合としない場合のAPEC生菌数の推移を検討する。
APECの病原性は発育鶏卵への接種により推定することが可能であるので(Wooley et al.、Avian Dis, 44:318, 2000)、APEC感染鶏を用いた実験を実施する前に、発育鶏卵を用いた実験系で予備的な検討を実施する。すなわち、12日齢の発育鶏卵をAPECに感染させ、そこにファージを接種した場合としない場合のAPEC生菌数の推移を検討するとともに、鶏胚の生死を観察する。
以上の鶏舎環境を模した条件下における成績と、発育鶏卵における成績を参考に、APEC感染鶏の飼養環境中にファージを散布した場合の、感染鶏の臨床症状および剖検時の病変、病変や臓器中の生菌数、飼養環境中のAPECの動態を検討する。

次年度使用額が生じた理由

購入を予定していた消耗品が欠品のため購入不可能であることが判明したのが年度末近くであったため、代替品を年度内に購入することが不可能であったため。

次年度使用額の使用計画

代替品を平成29年度当初に発注し、実験に使用する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2016

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 鶏飼養農場からの大腸菌バクテリオファージの分離と性状解析2016

    • 著者名/発表者名
      尾崎 弘一、関原 雄大、村瀬 敏之
    • 学会等名
      第159回日本獣医学会学術集会
    • 発表場所
      藤沢市
    • 年月日
      2016-09-08

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公開日: 2018-01-16  

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