研究課題/領域番号 |
16K08062
|
研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
近江 俊徳 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (40296091)
|
研究分担者 |
土田 修一 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (20217326)
落合 和彦 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 准教授 (30550488)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 血液型物質 / 輸血副作用 / 血液型 / 遺伝子解析 / CMAH遺伝子 / 疾患感受性 / ネコAB式血液型 |
研究実績の概要 |
本課題では、小動物において未解明の血液型物質産生の分子機序を明らかにするとともに、血液型物質の研究を輸血領域に留まらず疾患感受性関連解析へと展開するための基盤構築を目標にしている。3カ年計画の2年目となる平成29年度は、血液型物質の分子基盤構築について前年度国際誌に公表した(Omi T. et. al. 2016, PLOS ONE)ネコAB血液型におけるCMAH遺伝子変異解析を継続し、189例のネコ AB式血液型の分類及び N-アセチルノイラミン酸の発現に関連する CMAH変異対立遺伝子を同定した。イヌにおいては、骨髄由来のtotal RNAを用いてCMAH遺伝子のcDNAクローニングを行いオープンリーディングフレームの塩基配列をはじめて決定した。また、前年度同定したイヌCMAH遺伝子内cSNPを指標に、N-アセチルノイラミン酸の発現の有無との関連を解析(柴犬27例)し、遺伝子型頻度および対立遺伝子頻度に有意差があることを見出した。疾患感受性関連解析への展開では、動物病院にてネコパルボウイルス陽性と判定された検体について、当研究部門にて血液型判定によるシアル酸分子種発現、各ゲノム DNA用いたCMAH遺伝子解析、FPV遺伝子解析のシステムを構築し、5症例について、FPV遺伝子の塩基配列(VP、約1800bp)、血液型 (A型)、シアル酸分子種(N-グリコリルノイラミン酸)などの結果を得る事ができ、血液型物質とFPV感染症の関連研究に着手した。次年度以降、引き続き解析例数を増やす予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績概要に記述したとおり、本研究課題である輸血副作用を惹起する血液型物質の分子基盤構築と疾患感受性関連解析への展開の2年目となる平成29年度においては、血液型物質の分子基盤構築のため、ネコAB血液型におけるCMAH遺伝子変異解析を継続した。その結果、これまでの実績を合わせて約900例近い血液型別ゲノムDNAが収集され、N-アセチルノイラミン酸(B抗原)の発現に関与する8種類のディプロタイプ、N-アセチルノイラミン酸(B抗原)とN-グリコリルノイラミン酸(A抗原)の両方の発現に関与する2種類のディプロタイプを指標とした遺伝子型検査結果の知見が順調に蓄積された。さらに他機関とのネットワークが一部構築され外部検体の遺伝子検査が可能となり、今後益々詳細なデーターが得られる。イヌについては、 CMAH遺伝子のcDNAの構造を明らかにし、また cSNPと シアル酸分子種との関連が示唆されている。疾患感受性関連解析への展開については、症例数は少ないものの、FPV感染個体の赤血球膜表面にはN-グルコリルノイラミン酸が存在する事が示唆され、次年度以降の研究進展に基盤が形成されている。以上の事から本研究課題はおおむね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題である、輸血副作用を惹起する血液型物質の分子基盤構築と疾患感受性関連解析への展開を推進するために、平成30年度はこれまでの研究計画を継続して行うことになる。すなわち、血液型物質の分子基盤構築では、イヌおよびネコの血液型別ゲノムバンク構築と CMAH遺伝子解析を推進する。そして、疾患感受性関連解析への展開においては、前年度整えたネコパルボウイルス陽性検体の収集、血液型判定によるシアル酸分子種発現、各ゲノム DNA用いたCMAH遺伝子解析、FPV遺伝子解析の一連の解析個体数を増やし、FPV感染と血液型物質の関連を明らかにする予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
CMAH 遺伝子を解析するために購入したPCR試薬が充足し追加購入の必要がなかったため、次年度収集検体に対する遺伝子解析用試薬の購入経費とするため。
|