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2016 年度 実施状況報告書

牛乳腺組織における5-HT-PTHrP系の泌乳に対する役割

研究課題

研究課題/領域番号 16K08064
研究機関麻布大学

研究代表者

恩田 賢  麻布大学, 獣医学部, 准教授 (70308302)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードPTHrP / ウシ / ミネラル / 乳腺組織 / ICP-MS
研究実績の概要

5-HT(serotonin)と副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrP)による泌乳調節機構と乳牛の分娩性低カルシウム血症への関与を明らかにするために、以下の実験を行った。。
1.PTHrP分泌に対するカルシウム濃度の影響:ウシ乳腺上皮細胞由来培養細胞のbMECの機能解析を予定通り行った。予備実験の結果得られていたように、培養液のカルシウム濃度の違いを何からの方法で感知し、PTHrPの分泌を変化させていることは明らかであったが、カルシウム感知受容体の関与は明確ではなかった。カルシウム濃度に反応したPTHrPの分泌量の変化はbMECだけでなく、他の2つのウシ乳腺組織由来培養細胞でも確認されたことから、この調節機構の解明は今後も継続する。
2.乳汁中のPTHrPとミネラルの濃度:今年度は大規模酪農場と現場獣医師の協力を得て、分娩性低カルシウム血症発症牛の乳汁を採取することが出来たのでこれらの乳汁のPTHrP濃度を測定した。さらに主要なミネラルであるカルシウム濃度やリン濃度を測定し、健康牛の乳汁と比較検討した。その結果、乳汁中に比較的多く含まれるカルシウムなどの主要なミネラルだけではなく、微量なミネラルも測定することが必要になり、ICP-MSによる牛乳中ミネラルの網羅的測定を行った。サンプルとなる初乳は脂肪やタンパク質などが多く含まれ、分解方法と希釈倍率の検討、再現性の確認に時間を要したが、最終的に13元素の測定を行う事が出来た。
3.胎盤の胎子ミネラル栄養に対する関与:乳腺は新生子に対する栄養供給源であるが、胎盤は胎子に対する唯一の栄養供給源として重要であり、乳腺と対で研究することが必要と考えた。そこで大学附属動物病院に加え現場獣医師にも協力を得て、帝王切開時に臍帯動静脈と母牛の血液を採取し、乳汁と同様にPTHrPとミネラル濃度の網羅的測定を行うこと計画している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度取り組んだ3つの研究に対して下記のような結果を得られたので、ほぼ順調に研究は進展していると考える。
1.PTHrP分泌に対するカルシウム濃度の影響:カルシウム感知受容体の関与は証明できなかったが、他の2つのウシ乳腺組織由来培養細胞でも同様な反応が確認された。近年全く異なるカルシウムによる調整系の存在が腫瘍組織などでは確認されており、これらのウシ乳腺由来培養細胞を用いて研究を継続することには、ウシ乳腺組織における5-HT-PTHrPの意義を解明するのに有意義と考える。
2.乳汁中のPTHrPとミネラルの濃度:分娩性低カルシウム血症を分娩当日と翌日に発症した群で区別して解析した結果、いくつかのミネラルにおいて健康牛との間に有意な差があることを認めた。乳汁中のPTHrP濃度については、健康牛と比較しても分娩性低カルシウム血症の発症との関与は明確ではなかった。
3.胎盤の胎子ミネラル栄養に対する関与:帝王切開時に臍帯動静脈と母牛の血液を採取し、20以上の検体を得た。ICP-MSにより一部の検体の測定を行ったところ、乳汁よりも多くのミネラルの定量が可能となった。

今後の研究の推進方策

PTHrPとミネラルに関する研究においては新知見を得られつつあるので、この部分の解明に注力するが、5-HTに関する研究も進めていく必要がある。
1.PTHrP分泌に対するカルシウム濃度の影響:bMEC以外の2つのウシ乳腺組織由来培養細胞のキャラクタライズと、カルシウム濃度の変化に対する5-HTとPTHrPの反応、およびその制御について検討する。bMECについてはカゼインなどの泌乳期特異的タンパク質の発現が十分に誘導されていないので、分化の検討も引き続き行っていく。
2.乳汁中のPTHrPとミネラルの濃度:現在得られた結果の整理と検討を行っており、学会発表の準備中である。分娩性低カルシウム血症の乳汁サンプルは貴重なため、5-HT等さらに分析可能な項目がないかも検討中である。
3.胎盤の胎子ミネラル栄養に対する関与:帝王切開時における臍帯動静脈と母牛の血液採取は継続して行っていく。その際には可能であれば胎盤節の組織採取も並行して行い、組織学的な検索も行っていく。また、帝王切開の理由は症例によって大きく異なるため、各検体が本研究に用いるのに適当か、注意して取捨選択することにした。

次年度使用額が生じた理由

最終的に残った金額で、端数と考えていただきたい。

次年度使用額の使用計画

消耗品購入などに充てたい。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 乳牛における分娩性低カルシウム血症の予防2017

    • 著者名/発表者名
      恩田賢、安井喬
    • 雑誌名

      家畜診療

      巻: 64(1) ページ: 5-14

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Expression of uncoupling protein 1 in bovine muscle cells.2016

    • 著者名/発表者名
      Abd Eldaim MA, Hashimoto O, Ohtsuki H, Yamada T, Murakami M, Onda K, Sato R, Kanamori Y, Qiao Y, Tomonaga S, Matsui T, Funaba M.
    • 雑誌名

      Journal of Animal Science

      巻: 94(12) ページ: 5097-5104

    • DOI

      doi: 10.2527/jas.2016-0726.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Effects of intravenous lactated Ringer's solution in cows suffering from hepatic disorders.2016

    • 著者名/発表者名
      Ken Onda, Chikako Noda, Kazue Nakamura, Reiichiro Sato, Hideharu Ochiai, Sachiko Arai, Hiroo Madarame, Kazuhiro Kawai and Fujiko Sunaga
    • 雑誌名

      Asian Journal of Animal and Veterinary Advances

      巻: 11(8) ページ: 469-476

    • DOI

      DOI: 10.3923/ajava.2016.469.476

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Serum Ornithine Carbamoyltransferase Activity and Correlation with Fatty Liver in Dairy Cows with Displaced Abomasum.2016

    • 著者名/発表者名
      Ken Onda, Reiichiro Sato, Yosuke Sasaki, Hiroo Madarame, Hideharu Ochiai, Kazuhiro Kawai and Fujiko Sunaga
    • 雑誌名

      American Journal of Animal and Veterinary Sciences

      巻: 11(3) ページ: 85-90

    • DOI

      DOI : 10.3844/ajavsp.2016.85.90

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 牛の迷走神経性消化不良(幽門移送障害)における血清と第一胃液の電解質濃度の変化2016

    • 著者名/発表者名
      秋山真之介、佐野麻衣、佐藤礼一郎、恩田賢
    • 学会等名
      第159回日本獣医学会学術集会
    • 発表場所
      日本大学・神奈川県藤沢市
    • 年月日
      2016-09-06 – 2016-09-08
  • [学会発表] A case study of the hindlimb amputation in a Holstein cow2016

    • 著者名/発表者名
      Reiichiro Sato, Kazuhiro Kawai, Yasunori Shinozuka, Ken Onda.
    • 学会等名
      World Buiatrics Congress 2016
    • 発表場所
      Dublin, Ireland
    • 年月日
      2016-07-03 – 2016-07-08
  • [図書] 病態からみた牛の輸液,鈴木一由・山田裕編著.「2.電解質異常,2-3.カルシウム」,「5.成牛疾病の病態と輸液療法,5-2.乳熱の輸液」2016

    • 著者名/発表者名
      恩田賢
    • 総ページ数
      30
    • 出版者
      緑書房.

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公開日: 2018-01-16  

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