研究実績の概要 |
牛の乳腺組織における5-HT(セロトニン)-PTHrP系が、泌乳とカルシウム代謝に対してどのような役割を持つのか明らかにするために、平成28年度に続き以下のように研究を実施した。 1.ウシ乳腺組織由来培養細胞を用いた実験: カルシウム濃度の変化に対するのPTHrP分泌への影響を、これまでもbMEC(Yonezawa et al., J. Dairy Sci. 87(8):2527-34, 2004)はじめ数種のウシ乳腺組織由来培養細胞で行ってきた。平成29年度はMAC-T細胞(Huynh et al., Exp. Cell Res. 197(2):191-9, 1991)を入手することが出来たので、これを用いて実験を開始した。その結果、PTHrPの発現プロファイルが明らかに他の乳腺細胞と異なる事を確認し、現在は泌乳分化の誘導条件を検討中である。 2.牛の胎盤を用いた実験: 乳汁が哺乳子牛に対する唯一の栄養源だとすると、胎盤は胎子に対する唯一の栄養供給源である。PTHrPは胎盤においても胎子へのミネラル供給に大きく関与すると考えられる。そこで、乳牛の帝王切開時に臍帯動静脈と母牛の血液、胎盤節(胎子側と母体側)の組織などを採取し、PTHrPやミネラルの濃度、関連する各種遺伝子の発現状況を検討した。その結果、いくつかのミネラルについては胎子側で、あるいは母体側で有意な高値を示し、胎盤がその濃度勾配を作っていることが示唆された。
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