研究実績の概要 |
牛の乳腺組織と胎盤、さらに全身の代謝に対する副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrP)と5-ヒドロキシトリプタミン(5-HT、別名serotonin)の作用について引き続き検討を行った。 【乳腺組織】培地中のCa濃度の変化に対するのPTHrP分泌への影響を、これまでbMEC細胞(Yonezawa et al., J. Dairy Sci.87(8):2527-34, 2004)で行ってきたが、今年度はBMGE細胞(Schmid et al., J. Cell Biol. 96(1):37-50, 1983)とMAC-T細胞(Huynh et al., Exp. Cell Res. 197(2):191-9, 1991)を加えて行った。その結果BMGE-H細胞はPTHrPの発現量が非常に低く、Ca濃度にまったく反応しないのに対して、BMGE+H細胞は高発現であり、Ca濃度依存性にPTHrP分泌量が上昇した。これはマウス乳癌細胞と同様な反応であり、BMGE+H細胞が正常な泌乳期乳腺組織ではないことを示唆した。MAC-T細胞の反応は一定せず、現在も実験を継続中である。【胎盤】乳牛の帝王切開時に母牛と胎子の血液、胎盤節(胎子側と母体側)の組織などを採取し、各種検討を行った。その結果、PTHrPは母牛の血液中からは検出されなかったが、胎子静脈血、臍帯動静脈血からは検出された。胎子静脈血中のPTHrP濃度とCa濃度、さらにはCo濃度の間に負の相関を認めた。また、PTHrP遺伝子の発現量は胎子胎盤に比べ母胎盤で高く、これらのことから、母胎盤由来のPTHrPが胎子のミネラル代謝に影響を与えている可能性が示唆された。
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