研究課題
クマ類が示す冬眠は、体脂肪を唯一のエネルギー源とする絶食状態において、代謝異常を伴わずに生命活動を長期間維持できる点で、他の冬眠性哺乳類にはない特徴を有している。本研究は、冬眠中のエネルギー代謝を協調的に制御するための臓器間コミュニケーションツールが存在するのではないかとの仮説のもと、血中分泌型マイクRNA(miRNA)の代謝制御への関与の有無を明らかにすることを目的としている。平成29年度は、冬眠中に発現が変化する血中分泌型miRNAの網羅的探索を継続実施した。研究にはクマ飼育施設で管理されている成獣メスツキノワグマを供試し、活動期(7月)および冬眠期(2月)に同一個体より採取した血液よりエクソソーム分画を単離後、トータルRNAの抽出を行った。その後次世代シーケンサを用いたSmall-RNAシーケンスを実施し、発現比較を行った。この結果、複数のmiRNAで有意な発現の増加または減少が認められた。このうち、血中発現量が一定の水準に達していたもの、および発現変化が2倍以上であったものを選定し、平成29年度に新たに採取した血液サンプル(メス5頭、オス4頭)を用いて、リアルタイムPCR法を用いた再現性の検証実験を実施している所である。今後は、血中レベルで発現変化が認められたmiRNAを対象とし、肝臓・骨格筋(外側広筋)・皮下白色脂肪組織における発現変化を解析するなど、本解析で得られた結果を元に研究を進展させる予定である。
2: おおむね順調に進展している
次世代シーケンサを用いた網羅的発現解析により、冬眠中に発現量が変化する候補miRNAの選定を完了した。また、組織サンプル(肝臓・骨格筋・皮下白色脂肪)についても十分なサンプルを採取することができた。これらのことから、研究はおおむね順調に進展しているものと判断した。
リアルタイムPCR法を用いた再現性の検証を終えた後、血中で発現の変化が認められたmiRNAについて各組織における発現変化を解析する予定である。
次世代シーケンサーの解析について、委託業者にすべて行ってもらう計画であったが、本大学で所有する機器をもちいて同様の解析が可能であったため、経費を節約することができた。平成30年度は、組織を用いたqPCR解析やRNAmimicを用いた解析にかかる費用として用いる予定である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件)
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