研究課題
クマ類が示す冬眠は、体脂肪を唯一のエネルギー源とする絶食状態において、代謝異常を伴わずに生命活動を長期間維持できる点で、他の冬眠性哺乳類にはない特徴を有している。本研究は、冬眠中のエネルギー代謝を協調的に制御するための臓器間コミュニケーションツールが存在するのではないかとの仮説のもと、血中分泌型マイクRNA(miRNA)の代謝制御への関与の有無を明らかにすることを目的としている。平成30年度は、前年行ったSmall-RNAシーケンスによって冬眠中に発現が増加・減少したmiRNAを対象とし、qPCRを用いて再現性を検討した。この結果、miR-122-5pおよびmiR-486a-5pにおいては、冬眠中に発現が有意に減少することがqPCRにおいても確かめられた。また、肝臓特異的に発現しているmiR-122-5pについて、肝臓での発現量をqPCRを用いて比較したところ、同様に肝臓における発現が減少していることが明らかになった。一方、Small-RNAシーケンスによって冬眠中に発現が増加したことが示されたmiRNAについては、qPCRによる再現性を得ることができなかった。ただし、ツキノワグマ特異的と考えられる新規miRNA分子aml-novel-miR-1-3pについては、Small-RNAシーケンスおよびqPCRともに冬眠中に発現が有意に増加することが明らかになった。面白いことに、この新規miRNAのターゲットとなるmRNAの一つとして、血液凝固に関与するmRNAの存在が明らかになった。このことは、今回発見した新規miRNAが、冬眠中の血液凝固時間の延長に関わる可能性を示している。今後は、これらのmiRNAの機能をより明確に解明し、冬眠現象にどのように関わっているのかを明らかにしていく必要がある。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件)
PLoS One
巻: 未定 ページ: 印刷中
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