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2016 年度 実施状況報告書

哺乳類性腺の性差構築と性特異的エピゲノム制御・維持機構の分子基盤の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16K08072
研究機関神戸大学

研究代表者

星 信彦  神戸大学, 農学研究科, 教授 (10209223)

研究分担者 横山 俊史  神戸大学, 農学研究科, 助教 (10380156)
田渕 圭章  富山大学, 研究推進機構 研究推進総合支援センター, 教授 (20322109)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード性分化 / 生殖腺 / 生殖腺特異的エンハンサー / Sry / Dmrt1 / ヒストン修飾 / メチル化 / 転写制御
研究実績の概要

脊椎動物の多くは,それぞれの個体が雄もしくは雌のどちらかに分化して有性生殖を行うことが知られている.哺乳類ではY染色体に位置するSryが未分化性腺の支持細胞において発現を開始すると,精巣化実行因子Sox9の発現が誘導されることで精巣の形態形成が進行する.分化後の精巣においてはDmrt1が雌化関連遺伝子を抑制することで,性腺の性差維持を行っている. Dmrt1はDMドメインと呼ばれるDNA結合領域を有する転写制御因子であり,そのオーソログは脊椎動物のみならず,線虫やキイロショウジョウバエ等の無脊椎動物に至るまで広く存在し,その多くが性決定・性分化に関与している.ヒストン修飾状態の解析から,精巣においてのみエンハンサーシグナルがみられる領域が2つ存在し,Region I・IIと定義した.これらの領域について脊椎動物間における詳細な配列比較を行うと,Region I・IIともに進化的に保存されている領域を含んでおり,とくにRegion IIは真獣類特異的に塩基配列が保存されていた.同領域は精巣,卵巣および心臓において低メチル化状態にあった.さらに,同領域内で転写因子結合モチーフを探索すると,Sry,Sox gene family,Gata4などの精巣分化に必須の転写因子のモチーフが抽出された.加えて,レチノイン酸レセプターの結合モチーフの存在,および既報のChIP-seqデータを用いた網羅的な解析の結果においてNanog,Pou5f1の結合が認められた.本研究において新たに見出したRegionⅡはDmrt1の真獣類特異的エンハンサーであり,セルトリ細胞・生殖細胞において機能していると推測された.本研究は,in vivoにおけるDmrt1のシス調節領域について言及した最初の報告であり,性分化関連遺伝子の発現制御に対するNon-coding領域の関与について新たな知見を見出した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

予備検討では,真性半陰陽において,胎子期における雄性化の実行因子であるSox9の性腺発現量に左右差を認めているが,その原因は明らかではない.すなわち,Sox9の上流因子であるSryの発現が不十分である可能性,もしくはSryの上流因子の発現調節が不十分であった可能性などが想定される.一方,性決定遺伝子Sryの発現は正常で,Sox9の発現維持が不十分である可能性も想定される.遺伝的背景は同一であるため,これらの発現量調節の過程にはエピジェネティックな遺伝子修飾が関与すると考えられるが,その詳細な解析のためには標的候補遺伝子を絞る必要がある.胎齢11.5日において認められたSox9発現量の差が,出生後の表現型の差に直接的に関与している可能性も考えられる.Sryが発現する前である10.5日胚における雄の頭側部・中央部・尾側部の3領域を,雌のそれと比較した網羅的解析の予備実験結果では,幾つかの興味深い結果を得ている.しかしながら,前部,中部,後部の3領域の境界領域が重要なことも想定され,前部と中部,中部と後部の2領域で再検討を行っている..

今後の研究の推進方策

研究実績の概要には明記しなかったが,本年度は,Mus m. domesticus系統であるC57BL/6NマウスにMus m. domesticus poschiavinusのY染色体(Y(POS))を導入して,性逆転マウスの作製に成功した. SryおよびSox9が野生型よりも2~3尾体節(約9時間)遅延することにより精巣化が阻害されることを明らかにしている.その原因として,シークエンス解析の結果,精巣決定遺伝子SryはMus m. molossinus系統のものであり,また,XY型未分化性腺の部位別の遺伝子発現を網羅的に比較し,雄の性腺中央部における脂質代謝の亢進が精巣形成に関与することを明らかにし,性腺の発生およびSryの発現調節に関与する新規遺伝子候補を同定したい.特に,真性半陰陽マウスの精巣と卵巣(同一ゲノム背景)の個体発生学的エピゲノム解析,ならびにY染色体特異動原体の変異とエピゲノム制御(Xモノソミーモザイシスムの発現機構解明),または生殖細胞の性差はいつ,どのように生じるのか,等,性分化破綻機構の解明のために解析手段を加えたい.

次年度使用額が生じた理由

研究遂行計画上,物品購入が遅れたこと,ならびに英文論文校正および投稿が年度末になり一部を繰り越すこととなった.

次年度使用額の使用計画

論文投稿の完了ならびに本年度は2年目にあたり,当初計画していた実験を遂行することにより速やかな物品費の使用を予定している.

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Contribution of the coelomic epithelial cells specific to the left testis in the chicken embryo.2017

    • 著者名/発表者名
      Omotehara T, Minami K, Mantani Y, Umemura Y, Nishida M, Hirano T, Yoshioka H, Kitagawa H, Yokoyama T, Hoshi N
    • 雑誌名

      Dev Dyn

      巻: 246 ページ: 148

    • DOI

      doi: 10.1002/dvdy.24469

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Ontogenic and morphological study of gonadal formation in genetically-modified sex reversal XY(POS) mice2016

    • 著者名/発表者名
      Umemura Y, Miyamoto R, Hashimoto R, Kinoshita K, Omotehara T, Nagahara D, Hirano T, Kubota N, Minami K, Yanai S, Masuda N, Yuasa H, Mantani Y, Matsuo E, Yokoyama T, Kitagawa H, Hoshi N.
    • 雑誌名

      Journal Veterinary Medical Science

      巻: 77 ページ: 1587, 1598

    • DOI

      10.1292/jvms.15-0292

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] ニワトリの発生過程に特徴的な生殖腺の左右差2017

    • 著者名/発表者名
      表原拓也,南 貴一,万谷洋平,朝克吉楽,梅村ゆりあ,西田美穂,平野哲史,青山裕彦,吉岡秀文,北川 浩,横山俊史,星 信彦
    • 学会等名
      第122回日本解剖学会総会・全国学術集会
    • 発表場所
      長崎大学坂本キャンパス(長崎県長崎市)
    • 年月日
      2017-03-28 – 2017-03-30
    • 招待講演
  • [学会発表] マウス胎子性腺における性分化関連遺伝子転写調節領域のDNAメチル化状態2016

    • 著者名/発表者名
      久保田直人,表原拓也,山本 杏,三浦由佳,平野哲史,南 貴一,柳井翔吾,高田 匡,米田直起,岩本 遥,万谷洋平,横山俊史,北川 浩,星 信彦
    • 学会等名
      第39回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2016-11-30 – 2016-12-02
  • [学会発表] マウス真性半陰陽個体のミュラー管退行とAMHの作用様式2016

    • 著者名/発表者名
      山本 杏,表原拓也,久保田直人,南 貴一,平野哲史,万谷洋平,北川 浩,横山俊史,星 信彦
    • 学会等名
      第92回日本解剖学会近畿支部学術集会
    • 発表場所
      近畿大学東大阪キャンパス(大阪府東大阪市)
    • 年月日
      2016-11-27
  • [学会発表] ニワトリ雌右性腺退縮メカニズムの解明2016

    • 著者名/発表者名
      南 貴一,表原拓也,田渕圭章,平野哲史,横山俊史,万谷洋平,北川 浩,星 信彦
    • 学会等名
      第92回日本解剖学会近畿支部学術集会
    • 発表場所
      近畿大学東大阪キャンパス(大阪府東大阪市)
    • 年月日
      2016-11-27
  • [学会発表] マウス真性半陰陽個体におけるAMHの作用様式に関する組織学的解析2016

    • 著者名/発表者名
      山本 杏,表原拓也,久保田直人,南 貴一,広川千英,平野哲史,磯江美智子,柳井翔吾,高田 匡,米田直起,三浦由佳,岩本 遥,万谷洋平,北川 浩,横山俊史,星 信彦
    • 学会等名
      第159回日本獣医学会学術集会
    • 発表場所
      日本大学 生物資源科学部(神奈川県藤沢市)
    • 年月日
      2016-09-06 – 2016-09-08
  • [学会発表] Target and mechanism of neonicotinoid pesticides in birds and mammals.2016

    • 著者名/発表者名
      Hoshi N
    • 学会等名
      Post-Neonics What Next ? Symposium
    • 発表場所
      早稲田大学(東京都新宿区)
    • 年月日
      2016-06-18
    • 国際学会 / 招待講演
  • [図書] 獣医組織学 改訂第7版2017

    • 著者名/発表者名
      星 信彦
    • 総ページ数
      362
    • 出版者
      学窓社
  • [備考] 形態機能学研究室ホームページ

    • URL

      http://morfunc.main.jp

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公開日: 2018-01-16  

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