研究課題/領域番号 |
16K08072
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
星 信彦 神戸大学, 先端融合研究環, 教授 (10209223)
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研究分担者 |
横山 俊史 神戸大学, 農学研究科, 助教 (10380156)
田渕 圭章 富山大学, 研究推進機構 研究推進総合支援センター, 教授 (20322109)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 性分化 / 生殖腺 / AMH / 真性半陰陽 |
研究実績の概要 |
哺乳類の雄では,胎子期に精巣のセルトリ細胞で産生されたAMHの作用によってミュラー管が退行し,卵管・子宮・膣上部への分化が抑制される.しかしながら,当研究室で作製したB6N背景コンソミックマウスの真性半陰陽個体(O/Tマウス)では,精巣側ではミュラー管由来の器官が退行する一方,卵巣側には卵管・子宮が形成される. 胎齢13.5または14.5日の野生型雄およびO/Tマウス胎子の性腺中腎複合体を用い,免疫組織化学(IHC)およびウエスタンブロット(WB)によりAMHの発現・分布を解析した.また,胎齢13.5日の野生型マウス胎子の性腺にAMHを注入し,48時間培養後,HE染色によりミュラー管の退行程度を確認した. IHCでは,O/Tマウスにおいて,AMH陽性反応およびミュラー管退行が精巣側でのみ確認され,精巣から分泌されたAMHは同側のミュラー管にのみ作用することが明らかになった.また,野生型雄マウスの精巣において,精巣索内のAMH陽性反応とともに,間質で弱い瀰漫性のAMH陽性反応がみられ,頭側領域においてはその弱い陽性反応が中腎との境界部にも認められた.この結果の妥当性をWBで確認したところ,雄の中腎頭側部におけるAMH量は中腎尾側部の2倍以上であった.さらに,培養実験では,同一の培養液内で複数の性腺を培養したものの,AMHを注入した性腺でのみミュラー管の退行が促進された.以上のことから,AMHはホルモンとして分類されているにもかかわらず,狭義の内分泌様式とは異なり,セルトリ細胞から分泌された後,精巣間質に漏出し,精巣の頭側部から中腎領域に組織内を浸潤する形でミュラー管を退行させると考えられる.これは頭側から尾側方向に起こるミュラー管の退行様式とも合致しており,本研究はAMHの分泌作用様式を明らかにした初めての報告である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
真性半陰陽において,胎子期における雄性化の実行因子であるSox9の性腺発現量に左右差を認めているが,その原因は明らかではない.すなわち,Sox9の上流因子であるSryの発現が不十分である可能性,もしくはSryの上流因子の発現調節が不十分であった可能性などが想定される.一方,性決定遺伝子Sryの発現は正常で,Sox9の発現維持が不十分である可能性も想定される.遺伝的背景は同一であるため,これらの発現量調節の過程にはエピジェネティックな遺伝子修飾が関与すると考えられるが,その詳細な解析のためには標的候補遺伝子を絞る必要がある.胎齢11.5日において認められたSox9発現量の差が,出生後の表現型の差に直接的に関与している可能性も考えられる.Sryが発現する前である10.5日胚における雄の頭側部・中央部・尾側部の3領域を,雌のそれと比較した網羅的解析の予備実験結果では,幾つかの興味深い結果を得ている.しかしながら,前部,中部,後部の3領域の境界領域が重要なことも想定され,前部と中部,中部と後部の2領域で再検討を行っている.また,マイクロアレイデータの再解析に加えて,ChIp-Atlasなどのネット上のデータベースを用いてSryの上流因子を探索し,性腺器官培養系を用いて,その妥当性を検証している。
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今後の研究の推進方策 |
B6 XYマウスにおいて,Sryは11.25 dpc前後より未分化性腺の中央部から発現が開始され,その後,その発現は性腺の両端方向へと拡大し,精巣分化に必須のSox9発現に置換される形で消失する.この過程において,性腺の中央部と尾側部ではSry発現に6時間以上の差が生じるが,このSryの特徴的な時空間的発現を制御する詳細な調節機構は明らかではない.梅村(2015)は,Sry発現の開始直前期のマウス性腺を頭側部・中央部・尾側部に3分割し,マイクロアレイ解析,パスウェイ解析により時空間的なSry発現を制御する因子の同定を試みたが,同定した因子の機能および発現部位を考慮すると,Sry発現調節に直接的に関与する因子は明らかに出来ていない.また,Sry発現を調節する,GATA4やNR5A1等の既知の因子の発現量にも差異がみられなかったため,マイクロアレイデータを再解析する必要が生じた.さらに,差異が認められなかった要因として,XY性腺の頭側部と中央部の境界領域付近に精巣と精巣上体の接続領域が出現するが,同部位が頭側部・中央部のどちら側に含まれるかが曖昧であったために,Sryの制御因子が埋没した可能性も指摘された.マイクロアレイデータの再解析に加えて,ChIp-Atlasなどのネット上のデータベースを用いてSryの上流因子を探索し,性腺器官培養系を用いて,その妥当性を検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験施設への利用料の支払いの決算期日が2月末で3月分が次年度での支払になるため。
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