研究課題/領域番号 |
16K08073
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
澁谷 泉 鳥取大学, 農学部, 教授 (50162649)
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研究分担者 |
保坂 善真 鳥取大学, 農学部, 教授 (00337023)
北村 直樹 鳥取大学, 農学部, 准教授 (80301951)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | TRPV1 / TRPV1_SON / 視索上核 / 脳弓下器官 / 浸透圧受容 / 細胞内Ca2+濃度 / パッチクランプ / in situ hybridization |
研究実績の概要 |
①昨年度に引き続き、TPRV1ならびに、TRPV1の機能をHEK293細胞に単独で発現 させてパッチクランプ法および細胞内Ca2+濃度画像解析法にて解析した。TRPV1発現HEK293細胞におけるマニトール誘発電流とCapsaisin誘発電流は逆転電位がほぼ一致したものの、Capsaicin電流の速い脱感作がマニトール電流ではみられないことが判明した。一方、TRPV1_SON発現細胞およびTRPV1とTRPV1_SONの共発現細胞では、環境温度36度で行っても、カプサイシンに対しても浸透圧増加に対しても膜電流反応も細胞内Ca2+濃度変化も観察されなかった。②TRPV1とTRPV1_SONの発現がIn Situ Hybridization法で明らかになった脳弓下器官(SFO)と脳室上衣細胞において浸透圧感受性およびCapsaisin感受性を解析した。単離SFOニューロンにおいて、50mMマニトール刺激、Capsaicin刺激により膜電流応答は観察されなかった。さらに細胞内Ca2+濃度にも影響がなかった。③ラット脳から単離した脳室上衣細胞で浸透圧反応、Capsaicin応答を観察したが、いずれの刺激にも応答は観察されなかった。④視索上核(SON)のTRPV1発現細胞の組織学同定をより詳細に行うために、TRPV1のN端認識交代と、グリアマーカーであるGFAPの交代を用いて二重染色を行った。バゾプレシンニューロンが多数存在することが知られるSONの腹側領域に、TRPV1の免疫陽性が確認されたが、それらTRPV1陽性ニューロンはGFAP免疫陽性は観察されなかった。GFAP陽性シグナルは上衣細胞ならびにSON内のアストロサイト様細胞に観察された。これらの結果は、TRPV1分子がバゾプレシンニューロンに局在しているという我々の以前の電気生理学的証拠を支持している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TRPV1ならびにTRPV1_SON発現HEK293細胞における解析により、浸透圧誘発性の応答とCapsaicin誘発応答に明瞭な差が見いだされたこと、さらにはNativeに浸透圧感知能をもつ視索上核ニューロンで観察される浸透圧誘発応答がそのいずれとも異なることから、浸透圧感知分子はTRPV1関連分子であるがTRPV1_SONではなく、TRPV1と他分子の複合体である可能性が示唆される。また、In situ hybridization法でTRPV1、TRPV1_SONの両者の発現が明らかとなった脳弓下器官ニューロンと脳室上衣細胞の両者でCapsaicin応答も浸透圧応答も観察されなかったことは、これらの分子が浸透圧感知以外の機能を持つ可能性を示唆している。TRPV1、TRPV1_SONに関して機能面のみならず脳内分布という観点において数多くの証拠が得られているという点で、当初の計画通りの進行状況であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
TRPV1とTRPV1_SONの両者を4連で連結するコンカテマーの作成を試みる。この分子を発現するHEK293細胞での浸透圧応答を観察することにより、TRPV1_SONの機能を解明する計画である。加えて、引き続きラットの脳でのこの2分子の分布ならびに、それら分子を発現する細胞の特定をin situ hybridization法ならびに免疫組織化 学の手法で行い、これら分子を発現する細胞が特定できたら、その細胞におけるTRPV1関連分子の機能について、パッチクランプ法ならびにCa2+画像解析法にて 機能的な解析を行う。
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