研究課題/領域番号 |
16K08076
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
久留主 志朗 北里大学, 獣医学部, 准教授 (50215076)
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研究分担者 |
汾陽 光盛 北里大学, 獣医学部, 教授 (00153007)
杉山 真言 北里大学, 獣医学部, 助教 (30648225)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 妊娠 / 分娩 / オートタキシン |
研究実績の概要 |
テーマ①妊娠黄体での構造的及び機能的役割 LPA 産生酵素であるATXに対する抗ATX抗血清(Sigma-Aldrich社)を妊娠12日目の卵巣嚢内に局所投与したところ、×10希釈濃度では変化が認められなかったが、×3.3希釈濃度で72時間後の血漿P4濃度は有意に低下した。また同時点の黄体細胞のサイズ(組織切片の断面積で評価)も有意に減少した。黄体組織内の血管新生と血流量の変化の指標として、組織内の血管数、並びに血管腔内の面積を形態計測学的に検討した。抗ATX抗血清の局所投与はIgG投与と比較して、血管数には影響を与えなかったが、血管腔の面積を有意に減少させた。黄体組織内への貪食細胞の浸潤への影響を検討すると、好中球とマクロファージの浸潤は抗ATX抗血清投与群で抑制された。血漿P4濃度が低下したことにより分娩のタイミングや産仔数等に変化が生じると予測されたが、早産や流産などの分娩の異常や産仔数に有意な変化は認められなかった。 テーマ②血中ATXの妊娠維持・分娩への作用の評価 上記のものとは異なるATX中和抗体(Cayman社製)を妊娠12日目に尾静脈内に投与すると通常、23日目の早朝に見られる分娩が、半日早まるものや逆に半日もしくは1日遅くなる個体が見られた。その投与を18日目に行なうと半日、あるいは1日遅延する個体が増加した。これらのラットでは、死産の新生仔の割合も増加した。そしてこれらのラットの血中P4濃度は対照群に比べ高い値を示す傾向が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画した2つの研究テーマに関し現時点では、妊娠ラットへの抗ATX血清の投与により、卵巣局所あるいは循環血中のATX並びにLPAの作用をin vivoでの表現系である分娩のタイミング、産仔数(生存数)やその成長を指標にして実験を繰り返している。分娩の発来や産仔数は通常でも個体間のばらつきが大きい事象であり、これに対する実験処置の効果の評価は実験例数を重ねる必要がある。筆者らのATXに関する研究の初期において極めて有効であったCayman社製の抗体であったが、一次販売中止になった。そのためその抗体の作成と同じ抗原ペプチドを免疫して作成したSigma-Aldrich社製のものを使用しているが、精製していない分、抗体価はかなり劣っていると思われる。但し、濃度を高めて投与すると効果が見られるため、大量に得られた抗血清を用いて引き続き実験を行なっている。また市販の新しい製品について2商品を購入し、実験に使用してみたが芳しいデータは得られなかった。
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今後の研究の推進方策 |
上記のこの1年間の研究結果を踏まえ、この29年度においては当初の計画にあった黄体局所での作用の検討については、血管新生への評価を深める予定である。 また、分娩カスケードに関わる諸要因については、下垂体や胎盤由来の因子に関するアッセイ系を中心に29年度の所定の計画を進めていく予定である。またLPAの作用点の一つとして充分に予想される子宮の収縮に対する効果については、in vitro、すなわち摘出子宮標本のマグヌス法で、非妊娠期、妊娠・分娩周辺期のサンプルについての比較も含め、検討を開始している。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度計画のin vivo実験(ラットの分娩のタイミング、産子の数や生存率等)について、データの信頼性を得られるまでに実験を繰り返してきた。この結果を受けての次年度の、in vitro他の実験なので、その準備のための試薬等を購入しなかったためである。 また、研究分担者の学会出張の際のホテル代の事後精算が28年度内に間に合わなかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の出張宿泊代での支出が16万円程度、残り20万弱は29年度早期に実験の試薬と簡易機器の購入に充てる予定である。
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