テーマ②黄体ATXの妊娠維持・分娩への作用の評価 化学阻害薬であるS32826を妊娠15日目に卵巣嚢内に投与実験の信頼性を高めるべく引き続き行った。投与72時間後の卵巣局所の変化として、ステロイド産生細胞のサイズ、血中P4濃度、組織内の血流量と毛細血管数はS32826で有意に低下し、免疫染色で測定した好中球とマクロファージの細胞数もそれらに一致して変動した。分娩のタイミングと胎仔発育への影響は個体ごとのバラツキが相変わらず強く見られ、溶媒対照群に比べ分娩が一日早まるものや逆に長く遅延するものも見られた。また新生仔の体重も変化した。 テーマ③子宮組織の収縮活性に及ぼすATXとLPA1-6作動薬の効果 非妊娠時及び妊娠22日目のラットから子宮組織標本を作製し、免疫染色を試みた。LPA3/LPA4の局在と一致して、平滑筋層や子宮内膜にCOX1並びにCOX2の発現を確認できた。続いてPGF2aがLPAの作用下で産生増加するかについて、子宮標本の短時間培養後、培養液中のPGF量を定量したところ、オキシトシンの促進効果に比べると軽微であり、分娩日前日の標本では効果が無かった。摘出標本の収縮においてAAカスケード阻害薬のいずれの前処置も、LPAによる子宮収縮に有意な変化は見られなかった。LPA1/2/3阻害薬のKi16425を前投与すると、収縮のintegral値が有意に低下した。 テーマ④胎盤の発達と胎児の発育に対するATX/LPAの作用 機能実験を行うまでには至らなかったので、ATXとLPA受容体の発現と局在を細胞レベルで詳細に検討した。ATX、LPA受容体の蛋白質発現量、免疫反応性は共に妊娠後期に増加した。陽性細胞は、脱落膜、巨細胞の細胞質であり、LPA1とLPA4については細胞性栄養膜細胞の細胞質にもみられた。いずれのLPA受容体もサブタイプにより局在する細胞種が異なっていた。
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