研究課題
運動は、骨格筋での代謝を直接亢進させるとともに筋発達を促進して体全体での基礎代謝量を上昇させることが広く知られている。一方、近年、運動は骨格筋以外の組織に対しても影響を及ぼすことが明らかにされてきた。例えば、運動による免疫機能の調節、脂肪組織における脂肪分解の促進などが挙げられるが、少なくともその一部は運動による骨格筋分泌タンパク質(マイオカイン)の分泌変動によるものではないかと考えられている。本研究では、申請者が開発したin vitro擬似的運動刺激系を駆使して、この運動時に生じる免疫機能変動の分子基盤を運動因子産生の観点から読み解くことを目的とした。まず、骨格筋細胞C2C12に対して電気パルス刺激(EPS)を負荷後に培養上清を回収し、マイオカイン量を測定した結果、運動によって分泌減少するマイオカインとしてCCL5およびCXCL10を新規同定することに成功した。さらにEPS依存的なシグナル伝達制御機構を解析、CCL5分泌減少にはAMPK活性化が、CXCL10分泌減少にはp38 MAPK活性化が関与していることを明らかとした。これらのマイオカイン抑制は、トレッドミルあるいはランニングホイールを用いた動物個体を用いた走行実験でも確認することができ、個体レベルでも見られる生理的現象であることが分かった。最後にCXCL10分泌減少の生理的意義を調べたところ、血管新生を促進することが明らかとなった。以上、本研究によって、CCL5やCXCL10といった運動抑制性マイオカインを介した免疫機能調節機構の一端が明らかとなった。今後、これらマイオカインネットワークの研究をさらに進めることで、運動依存的な免疫機能調節をはじめとする全身への運動効果伝達のメカニズムがさらに明らかになることが期待される。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
Cytokine
巻: 108 ページ: 17~23
10.1016/j.cyto.2018.03.012
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 82 ページ: 97~105
10.1080/09168451.2017.1411778