研究課題
本研究では生きたマウスの筋線維/細胞内で異なるタイプ筋型をモニターする系を確立し,筋型決定・変換過程を筋細胞および筋原線維レベルで明らかにすることを目的とする。筋型をモニターするための遺伝子改変マウスの作出をメインに研究を進めた結果,ようやく安定的に実験に供するマウスの数が確保できるようになった。また,マウスの作出と並行して,筋型決定の主要な要因であるミオシン分子,およびミオシン分子のシャペロンである熱ショックタンパク質90(HSP90)に着目し,太いフィラメント内のミオシン分子置換効率がHSP90の活性により変化を受けるのか否かを検討した。HSP90を過剰発現させた培養骨格筋細胞では太いフィラメント内のミオシン分子置換が対照群と比較して迅速になること,HSP90の特異的な阻害剤を添加した培養骨格筋細胞ではミオシン分子の置換速度が低下することから,迅速な太いフィラメント内のミオシン分子置換にはHSP90のシャペロン活性が必要であることが明らかになった。さらに,HSP90を過剰発現した培養骨格筋細胞では細胞質内にプールされたミオシン分子の量が増えること,さらに転写レベルにおいてもミオシン分子を構成するミオシン重鎖の発現が上昇することが判明した。つまり,HSP90の活性が高まると骨格筋細胞内におけるミオシン分子の総量が増加し,その結果ミオシン分子の置換効率が上昇することが明らかになった。運動刺激を与えた骨格筋ではHSP90の上昇,ならびに筋原線維性タンパク質の発現レベルが上昇することが知られているため,培養骨格筋細胞におけるHSP90の過剰発現は生体における骨格筋への運動刺激を部分的に模していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
実験に供する遺伝子改変マウスが揃ったこと,およびミオシン分子の置換とHSP90の活性に関する論文が受理されたため。
遺伝子改変マウスが安定的に得られるようになったのでマウス骨格筋組織を用いた実験をメインとしてミオシン分子置換メカニズムを探求する。
試薬等の購入の際に安価な製品を選んだり,キャンペーン等を利用し節約に励んだため次年度使用額が生じた。本年度は次年度使用額を含めて,消耗品,および抗体等の購入に費用を充て,研究成果が得られるように有効活用する。
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Am J Physiol Cell Physiol
巻: in press ページ: in press
10.1152/ajpcell.00245.2017