研究課題/領域番号 |
16K08082
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研究機関 | 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
下田 修義 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 再生再建医学研究部, 室長 (90416173)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | DNAメチル化 / トランスジーンサイレンシング / ゼブラフィッシュ |
研究実績の概要 |
動物の細胞に遺伝子を導入するとしばしばトランスジーンサイレンシングと呼ばれるDNA メチル化を介した発現抑制が生じる。本研究の目的はトランスジーンサイレンシングと呼ばれるDNAメチル化を介した遺伝子の発現抑制メカニズムを解明することにある。申請者が偶然得た、2系統のGFP遺伝子トランスジェニックゼブラフィッシュは、トランスジーンサイレンシングが胚発生時のほぼ24時間だけ、一時的に解除され蛍光を発するという特徴を持つ。本研究ではこの現象をトランスジーンサイレンシングのモデル系とし、そこにかかわる因子を同定することでトランスジーンサイレンシングのメカニズムを明らかにすることを目指す。 本年度は、まず第一歩としてゼブラフィッシュの飼育システムの立ち上げを行った。循環型水槽システムを導入し水質の安定化を図った後、外部研究機関より上記トランスジェニックフィッシュや野生型ゼブラフィッシュの導入した。現在、安定して維持採卵ができるようになっている。次にトランスジーンのメチル化を担うゼブラフィッシュメチル化酵素を同定するため、CRISPR/Cas9による遺伝子破壊の系の立ち上げを開始した。ゼブラフィッシュにはトランスジーンメチル化酵素の候補として6つのde novo型メチル化酵素が存在する。まず哺乳動物のdnmt3bのオーソログ、dnmt3bb.2を標的とし、2種類のsgRNAをデザインし、それぞれCas9 mRNAとともに受精卵にインジェクションした。その結果、一方のsgRNAをインジェクションした胚(G0)において、そのゲノムDNAを抽出し、ターゲット領域をPCRで増幅したところ遺伝子破壊の結果生じたと推測されるfuzzyなバンドが検出された。クローニングの結果、目的領域に欠損変異が生じていることがわかったので、現在インジェクション配を継続飼育している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
最大の理由は追加交付であったので研究開始が予定より半年以上遅れたため。導入した循環水槽も、当初は水質が悪く導入した魚が次々と死んでしまうというトラブルに見舞われた。また魚やCRISPR/Cas9などのベクターの入手にMTAの手続き等で1~2ヶ月を要し、さらに実験開始が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
ゼブラフィッシュメチル化酵素dnmt3bb.2の欠損変異ラインを単離し、そこにトランスジーンサイレンシングの生じるGFP遺伝子を交配により導入し、GFP DNAのde novoメチル化に関与するか否かを解析する。また他のメチル化酵素遺伝子の変異体の作製、または既存の変異体の導入し、同様にしてトランスジーンサイレンシグへの関与を調べる。これらが困難な場合は、代替手段としてアンチセンスモルフォリノの受精卵への導入を行う。また上記トランスジェニックフィッシュにおいては受精後およそ24時間は、DNAメチル化に因らない、おそらくはヒストン修飾によるサイレンシングが生じていると推測される。そこでヒストン修飾酵素についてもアンチセンスモルフォリノで機能阻害し、サイレンシングを担うヒストン修飾酵素遺伝子を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
交付が平成28年11月と、通常より半年以上遅れたので、本来当該助成金で購入する計画であった、循環式水槽を他の研究費を使用して購入したため。
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次年度使用額の使用計画 |
計画より遅れているので時間を節約するために一部解析(次世代シーケンサーを用いる解析や抗体作製)を業者に委託し、実験補助員の雇用にも使用する。
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